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コラム

「なつぞら」を支える刈谷仁美&舘野仁美が語る“アニメーションにしかできないこと”とは?

 ヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)が北海道で育んだ開拓精神と想像力を生かし、当時「漫画映画」と称された草創期の日本アニメの世界でアニメーターを目指す姿を描く、連続テレビ小説「なつぞら」(NHK総合ほか)。今作には、なつだけではなく、アニメーション制作に携わるたくさんの人々が登場するのも魅力的です。記者は今作のおかげで、今まであまりじっくりと見たことがないアニメーション映画のエンドロールの役職名に、親近感を覚えるようになりました! アニメーターがヒロインの今作において、なんと言っても欠かせないのがなつたちが創り上げていくアニメーション作品そのもの。今回はそんな「なつぞら」のアニメーション制作に携わっている刈谷仁美さんと、舘野仁美さんにお話を伺うことができました。 名前の漢字まで一緒というだけで、ちょっと運命感じちゃいますね!

 舘野さんは、「となりのトトロ」以降、スタジオジブリで「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」など、ジブリ作品の動画チェックを数多く手がけてきました。皆さんにとってもなじみ深い作品なのではないでしょうか? 記者はジブリで育ってきたと言っても過言ではないので、いつもよりちょっぴり緊張気味でした(笑)。

 そんな舘野さんは、今作でアニメーション監修として、タイトルバック制作や劇中のアニメーションのプロデュース、そして小道具の制作を担当されています。また、俳優のアニメーター訓練を行い、アニメーターの所作や道具の扱い方などを指導されているそう。「役者の皆さんは、練習も真剣に取り組んでくれています。最初はぎこちなくても、何度か撮影を重ねると上手になる人もいますし、1回の練習だけでは足りないと思った人は『またやりたい!』と言ってくれます。本当に一瞬の所作なのですが、まじめに取り組んでくれています」とうれしそうな笑顔でコメント。何かをやりながらお芝居をするのは、俳優さんにとって難しいことらしいのですが、一本線を引くだけの動作のために、舘野さんもびっくりするぐらい繰り返し練習をしていた俳優さんもいたとのこと。本番まで少し心配だったそうなのですが、「撮影当日見たら、上手にできていたんです!」と目を輝かせながら語る舘野さんから、今作の制作に楽しんで携わっている様子が伝わってきました。

 そして、今作の題字とタイトルバック担当の刈谷さんを抜てきしたのも、舘野さん。舘野さんは「刈谷を選んだのはほとんど勘です。いただいた台本を読んでいて、この物語のヒロインが描く絵が必要になるだろうなと思った時に、刈谷が浮かんだんです。他にも同世代のアニメーターさんはいるんですけど、最初から彼女以外考えていなかったです。そこまで親しかったかというわけではないのですが、絵に本人の素養が出るので、“本人がすてきだったら絵もすてき。絵もすてきだったら本人もすてき”だと思っていたので。刈谷は、彼女の絵に描かれるキャラクターのように挫けずにやるし、悪口も言わないのです。それが、まさになっちゃんのようだなと思います」と起用理由を明かしてくれました。

 そんな刈谷さんは、2017 年、専門学校在学中に短篇アニメ「漫画から出てきちゃった話」を制作。同作品で、インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル観客賞 3 位を受賞。その後、第6回新人アニメーター大賞受賞。東京アニメアワードフェスティバル 2019 では、アニメオブザイヤー部門個人賞を受賞するなど、今をきらめく若手アニメーターです。今作では、全編がアニメーションで制作されたタイトルバックの監督・原画・ キャラクターデザインを手がけています。

 刈谷さんは「なつぞら」のアニメーションを引き受けた経緯について、「最初、舘野さんから聞いた時に、アニメーターを主題とした朝ドラをやるのは聞いていたましたが、まさか関わることになるとは思っていなかったので自分でもびっくりしました。アニメーターを主人公としたドラマというだけでも珍しいので、何かのご縁だと思ってお受けすることにしました」と当時の心境を教えてくれました。そして刈谷さんはなつと同じように、新米アニメーターの道を歩んだ一人。だからこそ、なつに共感する部分があるのではないかと伺うと「なっちゃんは仕上げ課から入ったのですが、私は原画に動きを入れていく仕事から始めたので、仕事内容自体に共感は覚えませんでした。でも、家に帰って、夜遅くにゴミ箱から拾ってきた先輩の絵を持ち帰って模写しているシーンには共感しました。私はゴミ箱から持って帰ったことはなかったのですが(笑)。同じ会社の人が出している画集を見て、練習したりしている人は多いのではないのかなと思います」と“新米アニメーターあるある”を教えてくれました! 「アニメーターを目指そうと思ったきっかけは高校生の時にテレビで放送されていた『魔女の宅急便』を見たからです」と、舘野さんの隣で語る刈谷さん。アニメーターを目指すきっかけとなった作品に参加していた先輩と一緒に作品に携わるなんて、まさに夢のような出来事ですね!

 そんなお二人が作ったタイトルバックの「なつぞら」の文字。花や鳥との融合がとってもかわいらしく、刈谷さんが描く台本の表紙絵にもピッタリですよね。実はこれ、舘野さんが初期のディズニー作品を見ていた時から、カリグラフィーという技法がすてきなものだと思っており、それを刈谷さんに提案したそう。舘野さんはご自身の斜め上を差しながら、「このへんで天使が“そうやるといいよ!”ってささやいたんです」とちゃめっけたっぷりなコメントをした後、「普段からいろいろなことに興味を持っておくと、点と線がつながって、すてきなモノができる時があるんです。今回も普通にレタリングするよりもすてきになると思ったので、刈谷に提案しました。私は、本を渡して、花とかがあるといいねという話だけをしたのですが、そこに刈谷らしさもプラスされて、現代と昔からのカリグラフィーという素晴らしい芸術が融合した作品を作ってくれました」と発想の秘訣と、タイトルバック制作の裏側を教えてくれました。それを受けて刈谷さんも「渡された本を喫茶店で読んで、それを参考にして描いたものを舘野さんに提出しました。最初に見ていただいた時、舘野さんに『これは刈谷さんのフォントだ!と言ってもらえるような“刈谷フォント”を目指してね!』とアドバイスをいただきました」と制作エピソードを語ってくれました。

 さて、今作で印象的だったセリフの中に、「アニメーションにしかできない表現とは何だと思いますか?」という、坂場一久(中川大志)からなつへの質問がありました。いざ問われてみると難しいこの質問に対して、舘野さんは少し考えながら「ディズニー作品のキャラクターの中には、ちゃんと名優が入っているんです。現実で探してもピッタリで完璧な人はいないけれど、アニメーションなら可能なんです。頭に思い描いた理想の人間を動かすことができるのはアニメーションならではなのではないかなと思います」と、その場にいた記者たちが“ほぉ~”と納得してしまう答えを出してくれました。

 そして、刈谷さんも少し悩みながら、「作中でなつも言っていましたが、アニメーションでは実写で撮れない映像が表現できるんです。タイトルバックの女の子も、転んだ後にけがをしていないように、現実では再現できないけれど、心に動いた“やってみたい!”を実現できるのがアニメーションなのかなと思います」と答えてくれました。広大なキャンバスの上で、自分が想像したモノなら何でも実現することができる。何とも夢のあふれた言葉に、記者もアニメーターの方々がうらやましくなってしまいました!

「なつぞら」に登場するなつたちが作るアニメーションは、名前、性別、年齢、そして身長や性格まで細かく設定されたキャラクター表がきちんと作れるくらいまでの準備をして作成しているそう。チラッとしか出てこないキャラクターでも、ちゃんとキャラクター表があるんだそうです。「なつぞら」本編はもちろんですが、お二人が細部までこだわって作っているアニメーション作品にも、ぜひ注目してみてください。

 さて、8月26日からの第22週では坂場の「マコプロダクション」への再就職が決まった一方、愛娘の優を預ける保育園が見つかりません。そんななか、なつは仲努(井浦新)から「東洋動画」の勝負作「キックジャガー」の作画監督という大役を命じられます。なつは保育ママを探そうとするのですが、共稼ぎ夫婦への風当たりは厳しく、途方に暮れてしまいます。そこで手を差し伸べたのは下山茜(渡辺麻友)でした。茜は「東洋動画」を辞め、子育てに専念していましたが、なつには女性アニメーターの先駆者として頑張ってほしいという思いを語ります。なつは茜の応援を受け、育児と仕事の両立に励むことになるのですが、そんなある日、優が熱を出していると茜から電話が入ります。仕事から手を放せないなつは。坂場に電話するものの、連絡がつかず――。


【番組情報】 

連続テレビ小説「なつぞら」
NHK総合 月~土曜 午前8:00~8:15ほか
NHK BSプレミアム 月~土曜 午前7:30~7:45ほか

NHK担当 A・M





 
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