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コラム

「いだてん」美濃部孝蔵を演じる森山未來、ビートたけしと松尾スズキのすごさを語る!

 ストックホルムオリンピックのマラソンで、中村勘九郎さん演じる金栗四三がゴール地点には現れず、日射病のためにホテルで休んでいたことが判明したNHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合ほか)。3月24日放送の第12回では、四三がマラソンのスタートを切ったと同時に、後に古今亭志ん生となる美濃部孝蔵も、落語「富久」のせりふを復唱しながら車を引いて走り始め、まるで四三と孝蔵の人生が重なり合っているかのようでした。そんな美濃部を演じるのは、森山未來さん。孝蔵という役を演じるだけでなく、孝蔵として語り手も務める森山さんからお話を伺いました。

──“意外にも”と言いますか、今回が初めての大河ドラマということですが、いかがでしょうか?

「うーん、長いです。だからやりたくなかったんです(笑)。でも、『いだてん』の演出をされている井上(剛)さんと大根(仁)さんにいきなり呼び出されて、口説き落とされた時点で、これは断る理由はないなと思ってやると決めました。大河ドラマは大河ドラマなんだけど、いわゆる時代劇ではないところを扱うところからまず冒険が始まっているので、それをここまで引っ張り上げている井上さんたちのエネルギーはすごいと思います」

──森山さんが演じているのは、後に古今亭志ん生となる美濃部孝蔵ですが、彼を演じる上で気を付けていることはありますか?

「とにかく本や文献を読みました。志ん生は“落語の神様”と言われていて、ラジオの音源やテレビの映像資料がいくつかはあるんですけど、いずれも晩年のものなんです。戦前どうだったのかは知られていないんです。自分で語ってはいるんですけど、噺家なので結構話が盛られているんですよ(笑)。そんな状況なので、推測するしかなくてどうしようかなと思いました。(志ん生役の)ビートたけしさんに寄せた方がいいのかもさっぱり分からなくて(笑)。それでたけしさんの撮影を拝見したら、髪の毛は金髪だし、思った以上にたけしさんだったので『ああ、もういいかな』って思いました。今は文献などを参考にしつつも、楽しくやらせてもらっています。孝蔵は四三さんと田畑(政治)さんっていう2人が生きていた時代に、同時代を生きていた人という生き証人的な位置と狂言回し的なポジションを与えられているし、志ん生の1個1個のエピソードが楽しいので、そこにのっかっていけばいいかなと思っています」

──孝蔵として演技をするだけでなく、落語やナレーション、そしてオリンピック予選会ではマラソン実況もされていましたが、それぞれ演じ分けたりされているのでしょうか?

「撮影の時はナレーションのことは意識してないです。もちろん落語の話がストーリーにリンクする瞬間はあるんですけれども、僕自身がことさら意識しなくても、いいかなと思っているので、それはあまり気にせずやっています。ナレーションは、それこそ『いだてん』に演出で参加している大根さんと『モテキ』という作品をやった時のモノローグで鍛えられた感じはありますね」

──先ほど、志ん生の1個1個のエピソードが楽しいとおっしゃっていましたが、彼の魅力は何だと思いますか?

「楽しいエピソードと言ったんですけど、それは志ん生によってトランスレートされているから面白く聞こえているだけで、すべてのエピソードはたぶん実際は凄惨(せいさん)極まりない(笑)。自分の悲惨な人生をどこか俯瞰(ふかん)で眺めていて、それを噺にしてお客さんを引き付けて笑いに変えるっていう。本当に落語の世界の中に生きている人なんだろうなって。彼は落語で話している内容と自分がやっていることが全部地続きなので、良い言い方をすると落語に人生を捧げ切っていて、そこが本当にすごいと思います」

──孝蔵は後にビートたけしさんが演じる志ん生となりますが、たけしさんとお話しはされましたか?

「物語の中では接点がないので、スタジオでお会いすることはないですけど、一度たけしさんに近づく機会がありました。たけしさんは、楽屋に戻らずにずっとセットの裏でモニタ見ながら座っていて本当に物静かなんですけど、話し始めると気軽にしゃべってくれるんです。その時に、古今亭の人たちはあったかい、ほんわかしているからいいよねってさりげなく言われましたね。たけしさんのすごい部分はいっぱいありますよ。高座に上がっていらっしゃるとたけしさんは、やっぱり生粋の芸人さんなんだなって。本当に芸を持った人っていう意味での芸人なんだなと思いました。僕なんかは覚えてやるっていうことしかできないですけど、たけしさんは高座に上がって目の前に客がいるシチュエーションで撮る場合は、事前に小噺を用意していらっしゃるんですよね。エキストラの人たちの表情をとるために小噺をやるんですよ、頼まれていないのに。大根さんが演出をされた回だったんですけど、ずーっと長回しで観客にしかカメラを向けていなくて、たけしさんの姿は一切撮ってないんです。大根さんはたけしさんがすごいって知っているから、台本にはない小噺を延々とたけしさんにしゃべらせて…。そういうのをさせる大根さんもすごいなって思ったし、そこに応えるたけしさんが素晴らしいなと思いました」

──それでは、孝蔵の師匠である橘家円喬を演じる松尾スズキさんはいかがでしょうか?

「緊張しますね、松尾さんは。素晴らしい作家さんで演出家で役者さんだと思っているので、本当に師匠のような。松尾さんって何を考えているか分からないから、何を出したらいいか分からない感じがあるじゃないですか。『TV Bros』に何を書かれるか分からへんみたいな(笑)。なんか空恐ろしいところが彼の中に常にあるので、近寄りがたさみたいなものは円喬と孝蔵っていう関係性としてはすごくよかったと思います。かといって愛情がない人ではなく、その愛情の出し方がすごく特殊な気がしているので、不思議です。一緒にいる時はほんのちょっと話しただけでも緊張するんですけど、今後、円喬と別れるシーンがあるんですけど、その時に思い浮かぶのが松尾さんで、その温かさみたいなものがすっと入って来るんですよ」

──最後に第13回の見どころをお願いします!

「孝蔵の目線からいうと、円喬に弟子入り後、『朝太』という名前をもらい、そこからついに初高座に上がるという瞬間の回になります。孝蔵はもちろん落語に真面目に取り組みたい気持ちもあるんだけれども、彼の弱気というか緊張もあるんでしょうが一筋縄ではいかない性格で、果たして本当に成功するのかっていう。そこと四三さんがストックホルムで走っている瞬間がリンクしていきます。初回から『孝蔵と志ん生は本当に要るのか』っていううわさはかねがね聞いてはいますが(笑)、四三さんや田畑さんと孝蔵や志ん生の距離感が第13回で、精神的にグッと近づく瞬間があります。孝蔵や志ん生の存在意義みたいなものを一度ここで感じていただけたらいいなと思います」

【番組情報】 

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」 
NHK総合ほか 日曜 午後8:00~8:45 
NHK BS4Kほか 日曜 午前9:00~9:45 
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45

 
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