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コラム

金曜の夜10時、青春時代の忘れ物を取りに戻ってみませんか? 土屋太鳳主演「チア☆ダン」は大人たちの“後悔”に寄り添うドラマ

 高校時代の夏。一瞬のきらめきのような青春時代、当時はただがむしゃらに前を向いて走り続けていたあの日々に、大人になった今、忘れ物を取りに戻れるとしたら…。あなたは、何を取りに行きますか? チアダンス部に青春を捧げる女子高生の姿を描いたドラマ「チア☆ダン」(TBS系)。エネルギー全開、フレッシュで元気いっぱいの青春を謳歌する彼女たちにとって、後ろを振り返る暇なんてないように思えます。しかし、このドラマの片隅に散りばめられているのは、実は多くの“後悔”だと思うのです。

 土屋太鳳さん演じる主人公の藤谷わかばは、受験に失敗し泣く泣く別の高校に進学します。印象的なのは、憧れのチアダンス部に入ることを諦めたわかばが「どんなに頑張っても、どうにもならんことはある。努力は裏切らないなんて、うそや」と吐く場面。高校野球の地方予選で負けてしまった幼なじみの背中を見ながら放った言葉ですが、自分の夢を諦めた“言い訳”のように一言一言かみしめるわかばの姿を見ていると、思わず自分自身の苦い思い出が喉にこみ上げてきてしまい、ごくりと唾を飲み込み、目では画面に映し出されているわかばたちを見詰めながらも、頭では自分の青春時代に思いをはせていました。

 また、新木優子さん演じるわかばの姉・あおいは、わかばが憧れるチアリーダー部・JETSのセンターを務めていた才色兼備。しかし地元の福井を離れて東京で挑戦してみたいと、家族の反対を押し切り上京を決意します。家族経営の小さな町工場に勤める生活、そしてずっと抱いてきた後悔や葛藤を捨て、夢に向かって一歩踏み出すあおい。さらに、わかばの高校に赴任してきた教師・漆戸太郎(オダギリジョー)も、過去の“頑張りすぎてしまった”失敗に捉われながら、妻と“頑張らないこと”を約束して再び教師の道に戻るという選択をしています。

 ひたむきにチアダンスの練習に取り組み、仲間と夢を追いかけるキラキラしたドラマの側面で、登場人物一人一人の心に宿る苦くて重いものが、過去に青春時代を過ごした大人たちの心にふっと重なる瞬間があるはず。私は7月6日に開催された試写会にうかがい大きなホールで見させていただいたのですが、突然高校のプールの匂いを鼻の奥に感じ、まるで自分があの頃にタイムスリップしたような感覚に陥りました。

「後悔のない人生なんてあるのだろうか。ぼくはずっと後悔をしつづけている。生涯、後悔から逃れることができないような気もする。そう思うと足がふいに重たくなる。」

 これは辻仁成さんの小説「冷静と情熱のあいだ」の中にあるフレーズで、私がこの本で一番好きな部分です。読み終えた後もこのフレーズが頭の中をぐるぐると巡っていました。「チア☆ダン」の第1話を見ている最中にこのフレーズがふと頭に浮かび、わかばたちと心が重なった瞬間、過去に置いてきた忘れ物を見つけることができたような気がしました。

 舞台あいさつで土屋さんが「(放送日時の)金曜の夜10時って、わかばのような学生さんにとって、週末に控えている部活の大会であったり模試であったり、大事な準備をする時間帯だと思うんです。そんな皆さんに、少しでも勇気や元気を与えられたらいいなと思います」とお話されていたのですが、この感覚がもはやものすごく遠いところにあると言いますか…。この言葉で一気に当時に引き戻されたような、そんな気持ちも懐かしみつつ、このドラマは見る年代によって受け取るものが全然違う作品になりそうだなと感じました。

 大人にとっての金曜の夜10時という時間帯…。1週間の仕事を終え、ぱーっと飲みに出かけたり、家でリラックスしたり、週末の予定に心を躍らせている頃でしょうか。ドラマ「チア☆ダン」は、彼女たちと同世代の人たち以上に、“後悔”する気持ちを抱えている大人の皆さんにこそ、見てほしいドラマだと思うのです。

TBS担当 宮下毬菜

【番組情報】

「チア☆ダン」 
7月13日スタート 
TBS系 
金曜 午後10:00~10:54(初回は、午後10:00~11:09)

 
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