Cheer up! アスリート2020

連載

高橋正直選手(馬場馬術)

人と馬とで、一歩ずつ──

馬場馬術に魅せられ、情熱を注ぐ高橋正直。人と馬が力を合わせ、男女の別なく行われる馬術の奥深い世界で一歩ずつ歩みを進めてきた。これまでの足跡、東京五輪への道筋に迫る。

 五輪で唯一、人間以外の動物が参加する競技“馬術”。そこには馬と共に戦うからこその難しさ、魅力がある。五輪で行われる馬術競技3種目の一つ、馬場馬術の日本代表として活躍する高橋正直は、“人馬一体”ならぬ“人馬一心”を目指し競技に打ち込む。

「馬術というのはやはり馬があっての競技ですから、自身の体調管理や、技術を磨くだけではありません。馬の体調管理もありますし、馬が今日のトレーニングでできたことが、明日も同じようにできるとは限りません。この一筋縄ではいかないところが難しさであり、魅力だと思います。“人馬一体”という言葉がありますが、僕が目指すのは“人馬一心”。自分の心にあることを馬が表現してくれる時は、競技をしていて最高の瞬間です。馬に対して特に合図を送らなくても、馬がまるで自分の体の一部のように思ったままに動いてくれる“人馬一心”を初めて味わえた時は、気持ち悪いというか(笑)、とても不思議な感覚でした」

 高橋が取り組む馬場馬術とはどんな競技なのか? 実はある人気競技との共通点も多く、観戦して魅了される人も多い。

「イメージしていただきたいのは、フィギュアスケートですね。専門的な知識がなくても、流れが美しいとか、リズムが乱れていないなどを見て楽しんでいると思います。馬場馬術もそういうところを見てください。本来は前に進む馬が、音楽に合わせて横に動いたり、フィギュアのスピンのように後ろ足を軸に回転したり、いろんな技をします」

 馬術は男女が同じ舞台で競うのも特筆すべき点。’12年ロンドン五輪では、当時71歳の法華津寛が出場するなど、年齢や性別を超えて戦える。

「もちろん体力も必要ですが、馬術だけあってそれ以上に“術”が大事になります。男女が一緒に競うことからも分かるように、決して力ではありません。いかに馬をリードして、良い演技を引き出すか。そのためには日頃のコミュニケーションが大切です。また、いい馬とめぐり会うことも大事ですね。いい馬と、それを乗りこなせる技術の両方がそろった時に、世界を目指すことができます。人間が“術”を身に付けるのには時間がかかりますから、他のスポーツと比べて年齢が高い選手もいます」

’18年はアジア大会で団体金メダルを獲得したが、それでも東京五輪の日本代表の座は保証されていない。勝負の年となる今年、大きな決断を下した。

「アジア大会は、選手や関係者全員が東京五輪を見据えて臨み、良い結果で終わることができました。ただ、アジア大会やリオ五輪を一緒に戦ったファブリアーノを、’18年で引退させたので、これからはドイツにいる2頭と頑張っていきたいと思っています。1頭は、15歳のルビコンユニテクノ。競技経験もあり、すでに世界選手権という大舞台を共に戦いました。もう1頭は、9歳のイートンユニテクノ。若くて競技経験があまりないですが、’19年はヨーロッパの競技会を転戦する予定です」

 2頭は馬場馬術の本場、ドイツにいる。高橋は毎月、7日から10日ほどドイツに渡り、信頼関係を築いていく。

「最初はお互いのことを知らないので、手探り状態でした。まずは馬に無理な要求はせずに、いろいろとやり取りする中で、いい関係を作ることを心がけています。馬と共に一つ一つ課題をクリアして、着実に東京五輪に近づけたらと思います」

 東京五輪まであと2年を切り、プレッシャーがかかる中で勝負の1年を戦うが、ここでリオ五輪での経験が生きてくる。

「リオ五輪は、ジャッジも選手も日頃の競技会でなじみのある顔ぶれでした。ただ、国を背負っているという点が普段とは大きく違いました。普段通りにしていたつもりですが、気付かないところでプレッシャーを感じていたのが馬にも伝わってしまったのかなと思います。大事な勝負の時でも馬に違和感を与えないように平常心で臨み、普段通りのパフォーマンスができるようにならなくてはいけません」

 東京五輪では、多くの競技で応援などのホームアドバンテージがあるが、馬場馬術では……。

「馬術に関して有利な点があるとすれば、人間が日本の暑さを知っていることくらいです(笑)。東京五輪に出る馬は欧州を拠点にしていて、その時に日本に連れてくることになると思います。馬は暑さには強くないので、自分の体調管理よりも馬のケアの方が大事になりそうです」

 東京五輪の質問に対し、「まだ早いです」と言いながらも、常に穏やかに真摯に答えてくれた。東京五輪まで平常心、そして“人馬一心”で着実に歩んでいく。


【TVガイドからQuestion】

Q1 印象に残っているスポーツの名場面を教えて!

テニスの錦織圭選手など、スポーツ選手が活躍されているのを見るとやはり刺激を受けます。リオ五輪では、錦織選手が銅メダルを取ったり、誰かがメダルを取ると選手村にそれが貼りだされていたので、もっと頑張ろうと思いました。

Q2 好きなTV番組/音楽を教えて!

前は好きな音楽を聴いて気持ちを高めたりしていたんですが、それをすると馬にいつもと違う感じが伝わってしまいます。今はいつも通りやるだけですね。テレビは、「情熱大陸」(TBS系)などドキュメンタリーが好きです。

Q3 “2020”にちなんで、20代の頃の自分へのメッセージを教えて!

20歳の頃は大学2年生で下積みでしたし、勝つこともできなかったですし、一番辛い時期かもしれません。ですが3年生の終わりから4年生にかけて競技成績もついてくるので、腐らずやれば必ず開花する日がくると伝えたいですね。

馬場馬術とは?
馬と共に行う競技スポーツ、馬術の中で、馬の動き(演技)の美しさと正確さを競うのが馬場馬術。20m×60mの長方形のアリーナ内で行われ、選手のリードで馬がさまざまなステップを踏んだり、図形を描いたりする。馬場馬術には、プログラム(演技内容)が決まっている規定演技と、選手が演技の構成をして音楽に合わせて行う自由演技がある。規定演技、自由演技とも、演技が項目ごとに10点満点で採点され、成績はその得点率で決まる。
【プロフィール】
高橋正直(たかはし まさなお)
’82年1月18日群馬生まれ。山羊座。

▶︎小学校の通学路に乗馬クラブがあり、小学5年生の時に本格的に乗馬を始める。障害馬術をしていたが、大学への入学を機に馬場馬術も開始。大学4年次には、馬場馬術で出場した全日本学生馬術選手権で優勝を果たす。
▶︎「卒業後は馬術をやめて他のことをしようと思っていた」と語るが、優勝をきっかけにドイツへ4年半の馬術留学をすることに。’06年アジア大会での団体銅メダル獲得など、日本代表として活躍するようになる。
▶︎ 東京五輪を目指す上でも、リオ五輪は絶対に経験しておきたかった」という’16年リオ五輪に出場し、五輪の舞台を経験する。残念ながらリオ五輪では予選敗退となったが、その経験を生かして’18年アジア大会では団体金メダルを獲得。’20年東京五輪で最高のパフォーマンスを目指す。
【プレゼント】
サイン入り生写真を1名様にプレゼント!

応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募締切:2019年1月16日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」1/18号(P114)をご覧ください。
「TVガイド」の購入はコチラ→https://zasshi.tv/category/TVG

取材・文/山木敦 撮影/古賀良郎、Ryosuke KAJI

キーワード

PAGE TOP