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7月クールドラマを完全分析! 2位「ハコヅメ」を抑えてトップに立ったのは?2021/10/28

「デジタルTVガイド増刊 ドラマコンプリート2021夏」表紙:TOKYO MER~走る緊急救命室~
「ドラマコンプリート2021夏」(東京ニュース通信社刊)

 今回も、TVガイドwebで毎週発表している「録画視聴ランキング」(関東73万台超のレグザ視聴データをもとに集計)の数値で、2021年7月クールドラマを振り返っていく。

 新型コロナウイルスへの警戒が続いていた上に、期間内に東京オリンピックも開催され、テレビ番組がひときわ大きな影響を受けた夏クール。さて、その影響が吉と出たか、凶と出たのか。まずは地上波連続ドラマの放送回ランキングの上位ベスト25がこちら(ポイントは1位を100とした場合の割合である)。

2021年夏ドラマ 放送回ランキング

 「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(TBS) の全11話と「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ)の全9話、計20話がきっちりベスト20を占めた。夏クールはこの2作品の完勝だったということだ。

 ベスト3を独占したのは「TOKYO MER」。物語が急展開を見せた10話(第3位)、11話(最終話。第1位)でポイントを伸ばしたことが決め手となったが、2位の第6話(8月8日放送)は東京オリンピックの閉会式の真裏になったことが功を奏したわけだし、逆に「ハコヅメ」に放送休止のアクシデントがなかったらどうなっていたか分からない。それほど僅差の争いであった。2強の後につけたのは「ナイト・ドクター」(フジテレビ)と「プロミス・シンデレラ」(TBS)。こちらも一進一退の激戦であった。

 続いて「平均録画視聴ランキング」。各ドラマの録画視聴ポイントの全話平均値を高い順に並べたベスト20である。

2021年夏ドラマ 平均録画視聴率ランキング

 ということで、「TOKYO MER」と「ハコヅメ」が1、2位を占めた。その差は本当にごくわずか。「ハコヅメ」が優勢に進めていたところを、最終2話のラストスパートで「TOKYO MER」が振り切ったという形だ。

 実際MERチームの成熟と、政権との対立を軸に進んでいた物語は、最終2話で大きく動いた。佐藤栞里が演じた喜多見凉香の死の衝撃と、城田優扮(ふん)するエリオット椿の近年のテレビドラマでは類を見ない突出した冷血漢ぶりは、記憶に残るものである。世帯視聴率と録画視聴の双方で今クールのベストドラマとなったのもうなずける。

 しかし全体を通してのファンの評価という点では「ハコヅメ」も決して引けをとってはいない。もともと評判の高い原作でもあったが、それを見事に映像化した手腕は素晴らしい。戸田恵梨香&永野芽郁の両ヒロインのはつらつさに加え、三浦翔平&山田裕貴の刑事コンビやハコチョー役のムロツヨシなど、それぞれがキャリアの代表作となるような好演を見せた。シリーズ化も有望な絶妙なチーム感。コロナとオリンピックに翻弄される中、満足度の高い2作品だったと思う。

 その他のドラマでは、これまた僅差で3位を争った「ナイト・ドクター」と「プロミス・シンデレラ」も健闘した2作品。フジテレビ月9の職業シリーズはすっかり定着して、今回も安定したポイントをキープした。次作の「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」で今年3本目の医療ものである。「プロミス・シンデレラ」も、“「逃げ恥」枠”と言われるTBS火曜10時枠の胸キュン恋愛路線を守り、まずは合格点。次作「婚姻届に判を押しただけですが」は、再び偽装結婚カップルが主人公。テーマは“ふいキュン”だそうである。

 続いて「最終回継続率ランキング」を見てみよう。「最終回継続率」とは最終回のポイントを初回ポイントで割った数値。最終回継続率が高い(=初回に比べて最終回のポイントが高い)ということは作品に対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。

2021年夏ドラマ 最終回継続率ランキング

 継続率が100%を超えた(=最終回の録画率が初回の録画率より高かった)ドラマは全部で13作。大きく注目される期待作が少なかった分、堅実に評価を勝ち取ったドラマが多かったようだ。そして最も高い継続率を獲得したのが、テレビ朝日金曜23時台の「漂着者」。どんな結末を迎えるかという興味で引っ張る正攻法で最終話のポイントを押し上げ、「TOKYO MER」を上回る継続率となった。最終回の展開を消化不良に感じる視聴者もいたかもしれないが、もともと制作サイドにすべてのつじつまを合わせるつもりはなかった節も…。何らかの形で続編があるのかもしれない。3位も23時台。東海テレビとWOWOWの共同制作で話題となった「准教授・高槻彰良の推察 Season1」が「ハコヅメ」を抑えてランクインした(こちらは間髪入れずWOWOWでSeason2が始まった)。

「准教授・高槻彰良の推察 Season1」が夏ドラマ継続率3位!

 4月クールの分析でも「シェフは名探偵」(テレビ東京)の継続率が2位になるなど、23時台のドラマの躍進が目立った。ポイント自体ではまだまだプライムタイムのドラマに一歩譲るが、今や深夜ドラマが無視できない存在感を放っているのは皆さんご承知の通り。そこで今回あらためて深夜帯ドラマの平均録画視聴ランキングに注目してみたい。

2021年夏・深夜ドラマ 平均録画視聴ランキング

 全18作中テレビ東京が10本と半数以上を占める。2位の「孤独のグルメ」に代表される“ドキュメント系ドラマ”が多いのも目を引くが、近年最大の特徴は、プライムタイムでは少なくなっている恋愛ドラマ、それもドロドロ系の恋愛サスペンスが多いことである。不倫、SEX、殺人がセットになっているケースも多い。またBL系もトレンドである。むしろ今、若い人やコアターゲットを狙ったテーマがここに集まってきているとも言える。結果的に、どうしてもF3、M3以上をターゲットにせざるを得ないプライムタイムドラマの現実との乖離がますます明確になっている。ちまたで囁かれる「ジャニーズドラマがプライムタイムから消える」的現象の理由もおそらくそのあたりにあるのではないだろうか。この“23時台問題”には、今後も注目していただきたい。

 この秋は多くの人気作、話題作がスタートし、空前のドラマ豊作シーズンともうわさされている。オリンピック・パラリンピックで夏クールはほとんど放送のなかったNHKのドラマも帰ってくる。また、レグザの新ブランドキャラクターである小栗旬出演の「日本沈没-希望のひと-」(TBS)にも、大いに期待したい。ドラマファンの方々により楽しんでいただくため、今後もさまざまな形でテレビの魅力を伝えていこうと思う。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社



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