宮部みゆき原作、内田有紀主演「荒神」は時代劇・特撮双方の新たな地平を切り拓いた

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 時代劇と特撮モノ。この二つのジャンルは、日本の映像文化が育んだエンターテインメントと言っても差し支えないだろう。さかのぼれば前者は黒澤明、後者は本多猪四郎と円谷英二という名匠たちの手で、半世紀以上も前に傑作が世に送り出されている。以降も伝統を受け継ぎつつ、時代ごとに最新の技術を採り入れながら、映画やテレビにおいて数々の名作が生み出されてきた。となれば、「この異なる二つのジャンルをミックスさせることで、新たな活劇が生まれるのでは?」という発想に行き着くのも、自明の理と言えるだろう。

 いわゆる“時代劇meets特撮”と呼べる作品の代表格としては、「大魔神」シリーズや「仮面の忍者赤影」などが挙げられる。とはいえ、いずれも少年少女が鑑賞するという前提から、ベースに勧善懲悪というテーマが据えてあり、ヒロイックな物語として描かれていた。もちろん、大人も存分に楽しめる。だが、英雄譚としてではなく…かつての日本で日常を生きた市井の人々が、いかに人智を超えた存在たる怪物と対峙(たいじ)するかを描いた作品も見てみたい──。そんな少なからずコアなニーズに応えるようにして登場した一篇こそが、「荒神」だった。

 しかも、作者は当代きってのストーリーテラー・宮部みゆき。人情とミステリー、そして怪奇現象を巧みに織り交ぜるのは得意とするところだが、まさしく最高峰と思わせるほどに健筆を奮う。重厚にして味わい深く織り成される人間模様を軸に、厄災のごとく現れて暴れる怪物との対決、その誕生にまつわる悲しき宿命をドラマティックに綴った、まぎれもない傑作。新聞連載中から映像化を希望するいくつものラブコールが届く中、NHKの熱量と本気度に胸を打たれた宮部は、快諾して果報を待つ。果たして、結集したキャストとスタッフが「挑戦だった」と口をそろえたプロジェクトは、時代劇・特撮双方の新たな地平を切り拓いた。

 時は関ヶ原の戦いから100年、元禄の世。東北の小藩・永津野藩の村では、朱音(内田有紀)を中心に始めた養蚕業が軌道に乗り、祭りが行われていた。そんな折、浪人・榊田宗栄(平岡祐太)が大けがを負った少年・蓑吉(高村佳偉人)を村に運び込む。巨大な爪で引っ掻かれた痕が残る蓑吉は、昏睡状態から目を覚ますと、自分たちの村が大きな怪物に襲われたことを告白。その脅威が自分たちの村にも近づきつつあることを知った朱音は、宗栄や絵師の菊地圓秀(柳沢慎吾)、蓑吉の祖父で鉄砲撃ちの名人・源一(大地康雄)らと協力し、怪物と戦うことを決意する。一方、朱音の兄で永津野藩重臣の曽谷弾正(平岳大)は、怪物を意のままに操ることをたくらんでいた。怪物はなぜ現れ、人々を襲うのか? その誕生にまつわる宿命に、やがて朱音や弾正たちものみ込まれていく──。

 役者陣の熱のこもった芝居もさることながら、完全なるVFXで描写された怪物の実在感に、見る者は圧倒されることだろう。穏やかな村を無情に蹂躙(じゅうりん)していく迫力と、なすすべのない人間たちの無力感。それでもなお、地に足をつけて生きようとする人々の生命力を、日本古来のミステリーである怪談のエッセンスを加味して描くストーリーも、ジワリと胸に迫りくる。長らく空白だった「時代劇×特撮」の系譜に新たな楔を打ち込むだけでなく、最新の映像技術を堪能できるという意味でも、スペシャルドラマ「荒神」が担う役割は大きい。本作を見届けるということはつまり、伝統と革新が出合う瞬間の立会人になる、ということでもあるのだ。

 先日行われた記者会見では、制作統括の加賀田透氏は、「宮部みゆきさんの壮大な原作に出合ってから、何とかこの作品をドラマにできないかと強く思い、総力を結集してつくりました。撮影は昨年の6月にクランクアップしていますのが、その後の半年の間に怪物の造形などVFXの作業を進めてきました。すべてフルCGでつくり、自画自賛になりますが(笑)、まるで本当に怪物がいたようにしか見えないという仕上がりになっていると思います。それはVFXチームをはじめとするスタッフの力と、内田さんをはじめとするキャストの皆さんのお芝居の力がガッチリかみ合ってできた結果だと思っています」と語った。

 主演の朱音を演じる内田は、「『CGとお芝居をするというのは難しい挑戦でした』とするとともに、これからは役者がCG合成を想定した芝居をしていくことも増えていくのではないか…と感じた撮影でもありました。そういう意味でも“挑戦”したお仕事でした」と振り返る。朱音と共に怪物と戦う浪人・榊田を演じる平岡は、「最初にこのお話をいただいた時、『時代劇と怪物』という組み合わせがすごく斬新で面白そうな企画だと思いました。楽しみに現場へ行ったところ、いい意味で監督が厳しくてですね(笑)…役者を追い込んで、いろいろな感情を引き出してくださったように感じます」と撮影時のエピソードを語ると、傷を負った孫の思いに押され、怪物と戦う源一を演じる大地は、「現場ではわれわれ、空気を相手に助監督さんが持っている棒を怪物に見立てて、演じなければならなかったので、最終的にどんな映像になっているのか拝見するまでは想像もできなかったんです。それが見事にマッチングしていて。本当に監督をはじめスタッフの皆さんのご苦労は計り知れません。『ゴジラ』のファンなど、多くの方に楽しんでいただければと思っています」

【番組情報】
スペシャルドラマ「荒神」 
NHK BSプレミアム 
2月17日 午後9:00~10:50
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