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「テミスの剣」孤高の刑事を演じる上川隆也に独占インタビュー! 「ミステリーを読む時は、奇麗にだまされるのが気持ちいいんです(笑)」 実力派俳優のピュアな一面とは!?2017/09/23

「テミスの剣」孤高の刑事を演じる上川隆也に独占インタビュー! 「ミステリーを読む時は、奇麗にだまされるのが気持ちいいんです(笑)」 実力派俳優のピュアな一面とは!?

 テレビ東京系で9月27日午後9時から放送される、ドラマ特別企画「テミスの剣」。刑事の渡瀬(上川隆也)が、県警全員を敵に回しながらも20数年にわたって事件の真相を追い、組織の闇に一人立ち向かっていく姿を描く、珠玉のミステリーです。

 今回、主役の刑事・渡瀬を演じる上川さんを直撃! 幅広い年代を演じる上での役作りや、本作ならではの刑事ドラマとしての魅力、上川さんご自身の信念やプライベートについてお伺いした完全独占取材の模様をお伝えします!!

── 渡瀬という役柄と上川さんご自身を比較して、共通している部分はありましたか? また、ドラマの中で20代から50代までの渡瀬を演じられていますが、どのような役作りをされましたか?

「僕は、役を演じるにあたって自分の中にある何かと照らし合わせたり、引き合いに出したりということはしないんです。むしろ演じる人物を『自分とは全く違う誰か』と思って演じる方が性に合っている。なので結論からいうと、渡瀬と僕に共通項を感じたことは一時もありませんでした。ただ僕にも20代、30代だった時期はあった訳ですから、自分の中にあるその『実感』だけは間違いなく頼りにしていいんだろうと思いました。『20代の渡瀬にも、当時の僕と同じ様な思慮の浅さは、きっとあっただろう』と彼の立ち振る舞いを推測したり、作り上げていくという作業には間違いなく役に立ちました。『その環境において渡瀬は何をするだろう?』と推し量っていく作業に、常に自分のそれぞれの『実感』を参考にすることで、渡瀬と向き合っていました。例え演じる役がどんな人物であろうと、そのように相対するようにしているんですけど、その度合いの深さにおいて、渡瀬は深めだったと思います。その境遇が、わが事として感じられるような物では一切なく、とてつもなく苛烈(かれつ)な人生を送らざるを得なくなってしまった男なので、彼の人生に自分の人生を引き合いに出すなんて及びもつきません。ですから渡瀬と自分との共通項ではなく、その時々の渡瀬の思いに考えをはせることの方が重要だと判断して取り組みました」

── 一から作り上げていく感じですね。

「作り上げる過程の手数は、他の役よりもちょっと多かった気がします」

── 自分のせいで人が亡くなってしまうというのは、想像するのがなかなか難しい環境ですよね。

「その事実を真っ当に受け止めず過ごす人生もあると思うんです。パーソナリティーが違えば『俺のせいじゃないんだ』と言うこともできる。それができない渡瀬が、背負ってしまった“枷(かせ)”とどう向き合ったのか。そこが、彼がいかなる人物なのかを測るポイントなんだと思います」

「テミスの剣」孤高の刑事を演じる上川隆也に独占インタビュー! 「ミステリーを読む時は、奇麗にだまされるのが気持ちいいんです(笑)」 実力派俳優のピュアな一面とは!?

── 他の作品にはない「テミスの剣」ならではの刑事ドラマとしての魅力を教えていただけますか?

「例えば『事件にまつわる謎』に重きを置くドラマや、『誰が犯人なのか』に重きを置くドラマなど、重心の置き方はさまざまだと思うんです。この作品に関しては、もちろんそういった事件の謎や犯人の誰何(すいか)も重心となっていながら、もう一方で『渡瀬の人生』にも重心が設けられていて、その重心を色々と移ろわせながら、最終的に一点集約していくという、とても豪華で豊かな物語の構成になっていると思います。さらに、そこに関わっていく人間模様にもきちんと、その時々でスポットが当てられていくことによって、重層的なドラマが生まれているところが、このドラマの特色でしょうし、一つの見どころになっていくと思います」

── 視聴者の方には、盛りだくさんで豪華な構成に注目してもらいたいですね。

「2時間ドラマでここまで盛り込めることは希だと思います。事件が起こって誰が犯人で、どんな動機や証拠があってという諸々に時間を費やさざるを得ない中で、ここまでぜいたくで絢爛(けんらん)な彩で作り上げられる作品はなかなかないですし、有り難いと思います」

── ドラマの後半の展開の速さがすごいですよね!

「『まさか!?』の連続が押し寄せて来ますから。ぜひ楽しんでいただきたいです(笑)」

「テミスの剣」孤高の刑事を演じる上川隆也に独占インタビュー! 「ミステリーを読む時は、奇麗にだまされるのが気持ちいいんです(笑)」 実力派俳優のピュアな一面とは!?

── ドラマでは、渡瀬が自分なりの秤(はかり)を持って信念を貫き通しますが、上川さんご自身の揺るぎない信念などお持ちでしたら教えていただけますか?

「信念というには到底及ばないんですけど、僕はたぶん役者以外のことでは、人間社会と相見えられないと思うんです」

── いやいやいや! そんなことないですよ(笑)。

「いえ、本当にそういう実感があるんですよ(笑)。自分は役者しかできない人間だと思っているので、だからこそ今50代を迎えて、この先どれだけ生きられるのか分かりませんけれど、できるだけ長く役者でいたいと思っています。それは信念というよりは願いに近い何かなんですけれど。でも、そうであるために、何をしていくのか? 例えば、1作品、1作品に対してどう向き合っていくのかという姿勢が、きっと次の作品にも巡り合えることになる。礎(いしずえ)になっていくのはそれだけだろうと思うんです。それを繰り返すことで、ようやく今の願いがかなっていくんだろうと思うんです。だから、そのために『自分は今、何をするべきか?』ということくらいは考えるようにしています(笑)」

── 将来的にずっと演じ続けられるように、今、目の前の作品に向き合われているんですね。

「そうでなかったら、僕はどうしようもない人間だと思います(笑)」

── ドラマでは、ミステリーの要素も多く含まれていると思うんですけど、上川さんご自身はミステリー作品は読まれるのですか?

「大好きです。特に若い頃は、むさぼるように読んでいました」

── 読んでいて「この人が犯人かな?」と謎解きされたりするんですか?

「推測しないわけではないんですけど、むしろ作者の思惑に乗っかるのが好きです。そうして、犯人が分からないまま最終局面を迎えて、素直に驚かされるのが楽しいタイプです。奇麗にだまされるのが気持ちいいんです(笑)」

── 作者の人からしたら、すごく良い読者ですね!

「作品によっては、『読者への挑戦状』を用意して『当てられるものなら、当ててみろ』と読者をたき付けるような作品も少なくなかったりして、作品によってその趣きに違いはありますが。僕は、それに立ち向かうよりは、むしろ『ならば、奇麗にだましてくれ』と身をゆだねたいタイプです(笑)」

── 上川さんは、ピュアなタイプなんですね!

「ピュアという時期はとっくに過ぎましたが(笑)。物語には、できるだけ身を浴していたい性質なんだと思います」

── ドラマやバラエティー番組などに出演されて、かなりお忙しいかと思いますが、そんな時のストレス発散方法がございましたら、教えていただけますか?

「先ほどの話とつながってしまうかもしれませんが、僕は、自分自身でも飽きっぽい性質だという自覚があるんです。でも、そんな僕が唯一、数十年にわたって飽きずに向き合っていられているのがお芝居なんです。いまだに飽きることはありませんし、『次にどんな役が来るのだろう』と思っている自分が間違いなくいる。とどのつまり、やはり演じていることで、僕は何かを解消できているんだと感じるんです。それもあって、いつまでも役者でいたいという思いがあるんでしょう。だからこそ、演じる役柄がある限りは、あまりストレスをため込まずにいられるんじゃないかなと思います。僕は、お芝居が終わって役を落とすために何かをしたり、気分転換のためにどこかに赴くことが全くないんです。舞台やテレビなどでも、幕が下りたり撮影が終わった瞬間に役がポンと離れるイメージで、全然引きずらずにいられる。それは、毎回役を楽しんでいて、楽しいからこそストレスにならないということなんだろうと自分では思っています(笑)」

──「この日までに台本を覚えなきゃいけない!」というように、焦ったりされないんですね。

「結局それをやることでキチンと演じられるならと思うし、キチンと演じられたその先に見えているゴールが楽しいのも分かっているので、それは苦に思っていません。例えば、野菜炒めを食べたいからってキャベツを切りながら泣いている人はいないじゃないですか?(笑)。ハンバーグにくぼみを作りながら『これ苦しい~』っていう人もいないと思うんです。その先においしい料理が食べられるという結果が待っている。その作業に近いと思います。出来上がった先がなんとなく想像できて、『演じたら、楽しい自分がいる』と分かっているからです」

 とても柔らかい雰囲気を醸し出しながら、一つ一つの質問に対して時間をかけてじっくり考え、丁寧に言葉を選んで答えてくださった上川さん。“演じること”に対する熱い思いも、とても印象的でした。かと思えば、冗談を言って笑わせてくれるなど、紳士的で優しいその気遣いが本当にかっこよかったです。そんな上川さんが、自分の過去と照らし合わせ、一から作り上げて演じた渡瀬はもちろん、さまざまな部分に重心が置かれている豪華な構成は、このドラマでしか見られません。上川さんも言われていた「まさか!?」の連続も含め、ぜひ、お楽しみください!

【プロフィール】

上川隆也(かみかわ たかや)

1965年5月7日生まれ。東京都出身。 ドラマ「遺留捜査」(テレビ朝日系)、「アキラとあきら」(WOWOW)、「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」(フジテレビ系)、「銭形警部」(日本テレビ系)、「検事の本懐」(テレビ朝日系)、「ガードセンター24 広域警備司令室」(日本テレビ系)、「沈まぬ太陽」(WOWOW)、映画「犬に名前をつける日」「二流小説家 -シリアリスト-」、舞台「シェイクスピア物語 ~真実の愛~」「真田十勇士」などの話題作に出演し、多方面で活躍している。

【番組情報】

ドラマ特別企画「テミスの剣」 
テレビ東京系 
9月27日 午後9:00~11:08

取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当記者)



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