コラム

海外から熱視線を受ける映画『ペンギン・ハイウェイ』公開直前! アニメーション界の理想形は「ペンギン・システム」の構築!?

注目のアニメーションスタジオ待望の長編作!! 石田祐康監督を直撃インタビュー!

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。今回は、8/17(金)公開の映画『ペンギン・ハイウェイ』が長編デビュー作となる石田祐康監督に直撃! 石田監督が考えるアニメ界の未来とは?


<主人公にシンクロし、愚直に絵を描き続ける>

 日本のアニメーションが世界的に高く評価されているのは周知のとおりだが、先頃、またも北米最大のジャンル映画祭“ファンタジア国際映画祭”で、映画『ペンギン・ハイウェイ』が最優秀アニメーション賞にあたる「今敏賞」に輝いた。監督の石田祐康氏は、短編では既に国内外の賞を多数受賞し、アニメーション界でいま最も注目されるクリエーターの一人。『ペンギン・ハイウェイ』は、石田と彼を擁する気鋭のアニメーションスタジオ、スタジオコロリドの長編第一作である。

「制作中はただひたすら愚直に、作品の主人公を応援し、自分自身をシンクロさせて描くだけ。他のことは頭に入ってこない状態でした。それが今、最も自分が力を発揮できる方法であり、命と同じ、いや言い過ぎですね(笑)、命の次に大事なことでした」

 自身のオリジナル短編作を作ってきた石田だが、本作は人気作家・森見登美彦の同名小説のアニメーション映画化である。

「友人や会社の人間に勧められて読みましたが、何も決まっていない時点で、イメージする絵をたくさん描いたんです。僕は元が絵描きなので、描いてみて楽しいかどうかで、できるかどうかを判断するというか。実は一度、描いた絵を森見さんに送ったところ、お断りされたのですが、その時点ではもう、描きたいという思いが強くなっていて(笑)。工夫して再度描き直し、OKをいただきました」

 何かを絵に起こす作業は非常に労が多く思えるが、「脳の中にぼんやりあるものを視覚化するのは、数ある確認作業の中でも精度が高く、効率も悪くない」と語る。さて、独特で不思議な世界観が持ち味の森見作品の中でも『ペンギン~』は、少年のひと夏の経験を描いた異色作だ。同時に石田の短編映画『陽なたのアオシグレ』(’13年)と同じ、主人公が小学4年生の少年という大きな共通項がある。

「はい、その共通点をもってして、この作品を選んだところもあります。性格は全く違いますが、信じることに真っ直ぐ取り組んでいる。“いいな、コイツちゃんと頑張っているな、信頼できるな”という点に大いに共感を得て。もっともかわいいだけの物語ではなく、森見さんが書かれる光と影というか、深層心理に触れるような面も大いに感じられ、それも原作に惚れた大きなポイントでした」

 原作のストーリーに非常に忠実でありつつ、石田作品印とも言うべき、疾走感にあふれた画が観客をのせ、高揚させる。

「終盤は原作でもたくさんペンギンが登場し、行進していく。でもそれでは足りないと思い始め、動的な映像を作るため、一つ一つを重要な装置として考えました。結果、ペンギンたちに乗って走るわ飛ぶわ周りの景色が歪むわ、というシーンに。そこに自分がやる意味もあるし、やりたかったことだと、やっちゃいました(笑)」

<“余裕”を還元・循環するペンギン・システムで(笑)>


 さて、’11年の設立とほぼ同時にスタジオコロリドに入社した石田。社員一号、かつ同社のクリエーター第一号という。

「何か作品を作る際は、一致団結してみんなで作れることが大事。でも自分だけの会社にしたい気持ちはまったくなく、各々が思う作品を、各々が作るのを楽しんで見ている感じです。みんなにいろんなチャンスがあり、競り合う形がいいな、と。僕も色んな刺激が欲しいですし」

 “クールジャパン”の象徴でありながら、現場スタッフに厳しい環境と言われて久しいアニメ業界。コロリドが打ち出す“アニメ制作に関わる人が安心して働ける環境”という会社理念が、それを少しずつ変えて行くかもしれない。

「周知していただける大きな機会となる劇場作品をしっかりいいものにし、次に繋げていく。そこに一定の余裕が生まれ、それを会社に還元していく。まさに本作に登場する“ペンギン・システム”ですね(笑)。毎日コツコツ根を詰め仕事にすべてを注ぎ込み、頑張った人が報われる評価と報酬…大作ばかりでは疲弊するので、クリエーターの初期衝動や根源を思い起こさせる時間や機会も含めて、循環させられたらなとゆる~く考えてます(笑)」

 さて、次々とスタジオが生まれている日本のアニメーション界に何を思う!?

「先人たちが何世代にもわたって築き上げたからこそ、目の肥えた観客と作り手の共通認識や対話が既にでき上がっていて、僕らは恵まれているな、と。絵やアニメだからこそ表現できる疾走感や、どこか抜けた可笑しみが好きで、僕はそれをアクセントとして対話の糸口にしています。例えば、本作では主人公のアオヤマ君の友達のウチダ君。彼がペンギンのペンタをかわいがっている場面はとても地味ですが、可笑しくて、一番好きな場面なんです」


スタジオコロリドとは?
’11年に設立。石田とスタジオジブリ出身の新井陽次郎を中心に、20代の新進気鋭のクリエーターが集い、デジタル作画のアニメーションを制作。’13年に石田が短編映画『陽なたのアオシグレ』で、’15年に新井陽次郎が短編映画『台風のノルダ』で劇場監督デビュー。YKKのショートムービー、CM、ゲームアプリなど多方面で活躍している。
ペンギン・ハイウェイ

8/17(金)公開
ある日、ペンギンが町に現れた不思議な現象を小学4年生のアオヤマ君が研究し始める。歯科医院のお姉さんが現象に関わっていることを知り、謎を解明しようとするが…。声の出演に北香那、蒼井優、西島秀俊ほか。

今回、取材したのは…

石田祐康さん(アニメーション監督・キャラクターデザイナー)
’88年、愛知生まれ。高校在学中にアニメーションの制作を始める。京都精華大学マンガ学部アニメーション科に進学し、’09年に自主制作した短編「フミコの告白」が第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞ほか、国外の賞も複数受賞。京都精華大学での卒業制作「rain town」も文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞に輝き、2年連続受賞となった。’13年、『陽なたのアオシグレ』で劇場監督デビュー。

Interview=折田千鶴子

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