コラム

「西郷どん」放送直後から話題沸騰!
俳優目線で全国へ届ける“薩摩ことば”

薩摩ことば指導を担当する俳優
迫田孝也&田上晃吉を直撃!

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
今回は、大きな話題を呼んだ大河ドラマ「西郷どん」の〝薩摩ことば〞に注目。薩摩ことば指導を担当する2人の俳優に熱い思いを聞きました!

 西郷隆盛の熱き生きざまを描く’18年の大河ドラマ「西郷どん」(NHK総合ほか)が、スタートした。第1話放送後、ストーリーもさることながら話題を呼んだのが、劇中で使われる〝薩摩ことば〞。実際、鹿児島地方独特のイントネーションと言い回しは、作品の世界観をつかさどる重要なファクターに位置づけられている。それゆえ、今作では〝薩摩ことば〞指導に鹿児島出身の現役俳優2人が配された。その当事者である──「真田丸」(’16年)の矢沢三十郎役で大河ファンにはおなじみの迫田孝也と、「篤姫」(’08年)で精忠組の一員・有村雄助を演じ「龍馬伝」(’10年)では薩摩ことば指導を担当した田上晃吉のコンビを、今週はフィーチャー。まずは、薩摩ことば指導を打診された時の胸中から聞いた。

「正直、悩みました。今でも俳優として出演したい気持ちもありますし…。一方で、『真田丸』の時とは違った形で鹿児島に恩返しができる喜び、故郷を舞台にした作品に関われる幸せをとても感じています。田上さんとお仕事をするのは初めてだったんですが、方言指導経験がある田上さんとコンビを組むにあたって、まず〝大河ならではのやり方〞を学んだ上で…年長者として、徐々にイニシアチブを移行させていきました(笑)」(迫田)

「僕も当初は出演での参加を望んでいたので、方言指導でという打診には、やはり悩みました。ただ、お世話になっている演出の方から『同郷の迫田孝也さんとのタッグでやってほしい。晃吉、頼むね』と直々に言われたことと、どんな形でも薩摩が舞台の大河ドラマに関わりたいという思いから、ゆくゆくは役をいただくチャンスが来ると信じて(笑)、快くお引き受けした次第です」(田上)

<「○○どん」という呼び方に対するこだわり>

 かくして誕生した〝迫田上〞コンビ。両者が薩摩ことばをセリフ化する上で重視したのは、俳優としての感性だった。

「そもそも、現代の日常会話で『○○どん』『○○さぁ』と呼ぶことは、ほぼないんですよ。なので、『西郷どん』の中では新たに〝吉之助(隆盛)を基準とした使い方〞のルールをつくりました。吉之助は、同年代や年下を『どん』と、年長者を『さぁ』と呼び分けています。あまりがんじがらめにせず、用法には幅を持たせてもいて、人物同士の関係性でどう呼ぶかを定めています」(迫田)

「撮影を進めるにつれ、全幅の信頼を置いていたり、親しみを抱く相手に対して『○○どん』という呼び方をしているのかな、と気づいたりもしました。余談ですが、『西郷どん』スタッフ内では、現場で互いに『〜どん』と呼ぶのが浸透してきているんですよ(笑)」(田上)

<新しい薩摩ことばをつくる感覚で日々奮闘中>

 ともすれば、2人の役割は現代の鹿児島弁と〝薩摩ことば〞のギャップを埋める作業のようにも感じられる。だが、彼ら自身の捉え方は、少し違っていた。

「例をあげると、今で言う『です、ます』を今回は『〜もす』に統一しているんですが、僕たちは『〜もす』という言葉を使ったこともなければ、聞いたこともないんですね。でも、いざ語尾を『です、ます』にしてしまうと、やはり昭和以降の近代的なニュアンスになる。じゃあ、江戸から明治という時代を表している雰囲気がする『〜もす』をチョイスしよう、といった考え方をしていこう、と。なので、ギャップを埋めるというよりも、新しい言葉をつくっているような感覚で日々、現場で奮闘しています」(迫田)

「例えば、『することができない』は『すっごっができん』と直したくなるんですが、現場で役者さんが実際に言うと、スタッフの方が『え、何?』と聞き返すんですね。そこまで厳密にしてしまうと、鹿児島以外の方に伝わりづらくなる可能性もある。なので、先輩(迫田)が中心になって、なるべく全国の視聴者に伝わるよう言葉に新しい解釈を、という考え方に切り替えていったんです」(田上)

 表現および俳優への伝達における試行錯誤は、今後も続くことだろう。

「当初は僕たちがしゃべったセリフを音源にして役者さんに渡していたんですが、名詞が主語になるとイントネーションの置き方が変わったりするので、セリフのアクセントが付く箇所に○を付けて視覚化してみたんです。そんなふうに、伝達の面でも工夫を凝らしています」(田上)

「薩摩ことばというと『ごわす』といった男性ことばの印象があると思いますが、女性たちの柔らかく温かみのある話し方にも着目していただけるとうれしいです。特に満佐さん(松坂慶子)! 田上さんは現場で感涙していました」(迫田)

 「はい、涙が止まらんかったです」(田上)

 愛する薩摩ことばの魅力を伝えたい2人の情熱は、桜島のごとく燃えたぎっている。並々ならぬ熱い思いが込められ、「西郷どん」の世界で生き生きと力強く飛び交う薩摩ことばを、1年間たっぷり堪能したい。


第1&2回で登場した気になる薩摩ことば
「チェストー!」
自分を鼓舞し、気合を入れる際に使う掛け声。「西郷どん」ではナレーションにも頻出する“決めゼリフ”になっている。

「やっせんぼ」
“ 臆病者”“度胸なし”“役立たず”というような意味合いのことば。斉彬と吉之助の初対面シーンでも登場する。

「キバれ!」
“ がんばれ!”の意味。相手を激励する時に使用する。こちらも「西郷どん、キバれー!」などナレーションでも登場。

「じゃっどん」
“ そうだけど”“でも”“しかし”などと同じ意味合い。相手の言葉を受けて尻込みする時などに使われることも多い。
大河ドラマ「西郷どん」
1/21 (日)
NHK総合 毎週日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム 毎週日曜 午後6:00~6:45

吉之助(鈴木亮平)は意見書を書き、人々の窮状を斉彬(渡辺謙)に訴える。

今回、取材したのは…

迫田孝也さん(俳優)
’77・4・6鹿児島生まれ。大河ドラマ「真田丸」など、数々の舞台・ドラマ・映画に出演。現在、「ごごナマ」(NHK総合)木曜15時台にレギュラー出演中。4/27(金)~東京芸術劇場にて上演の舞台「酒と涙とジキルとハイド」に出演。

田上晃吉さん(俳優)
’82・11・25鹿児島生まれ。「篤姫」「龍馬伝」といった大河ドラマをはじめ、「坂の上の雲」(’10~11年の第2、3部)など多くのドラマに出演。近年は大河ファンタジー「精霊の守り人 最終章」(NHK総合)などに出演。

Interview=平田真人

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