コラム
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スタジオジブリ待望の新作公開!
2つの“初”から見るスタジオジブリの“挑戦”と“不変”

新作は初の海外との共同制作!
22作目公開を盛り上げる“スタジオジブリ総選挙”開催の裏側とは

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
今回は、9/17(土)公開「レッドタートル ある島の物語」と、“スタジオジブリ総選挙”から、現在のスタジオジブリについて考察します!

スタジオジブリ初の試み“総選挙”と“共同制作”

 ちまたを大いににぎわせた、初の試みである“スタジオジブリ最新作公開記念・ジブリ総選挙”の投票が終了し、結果発表を待つばかり。だが「スタジオジブリって制作部門が解体したよね!?」と不思議に思う人も多いだろう。いや、喜んで欲しい。’14 年に制作部の小休止が発表されたが、スタジオジブリ自体は健在。そして今回初の海外と共同制作した、スタジオジブリ最新作が生まれたのだ。その「レッドタートル ある島の物語」を配給する東宝株式会社・宣伝部長、伊勢伸平氏に総選挙を発案した思いを聞いた。

「もちろん新作『レッドタートル』を盛り上げる一環として、まずはこの作品が22作目となる正式なジブリ最新作であると広く世に知らしめたい、という目的があります。何しろ弊社宣伝部の中でさえ、海外アニメをジブリが買い付け、東宝が配給するだけと勘違いしている部員もいましたから(笑)。でも本作は、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、大好きな短編アニメ『岸辺のふたり』(’00 年)のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督に長編アニメ制作を持ち掛け、一からともに作った、生粋のジブリ作品なんです」

 とはいえ実は、伊勢氏が総選挙を思い付いたアイディアの種は、「レッドタートル」がカンヌ国際映画祭に出品された際(ある視点部門・特別賞を見事受賞の快挙!)、マイケル監督と交わした雑談の中から生まれたものだったという。

「全ジブリ作品を見ているというマイケルさんが、最初に大スクリーンで観たのが『天空の城ラピュタ』だと聞いたとき、すごくうらやましくて(笑)。僕、中学生のときに『風の谷のナウシカ』を田舎の映画館で見たのですが、その後の3本をスクリーンで見逃したままなんです。どうしても映画館の大画面で見たい!! との思いがあった。そんな時、TOHOシネマズの担当者から『“ジブリの旧作上映〟という野望がある』と聞き、劇場を巻き込んだ盛り上げ企画としてピッタリだ、と動き始めたわけです」

 鈴木プロデューサーに提案したところ、「面白い、やろう」と快諾されたという。では、どの旧作を上映するか。マイケル監督曰く“好きな作品を1つ選べない”という、そういったジブリファンが多いため、あえて人気投票ではなく、“今、大スクリーンで見たい1本”を選出理由に定めた。ちなみに“総選挙”というネーミングは、誰かが言いだした仮題が、いつしか本題になってしまった、と笑う。

「総選挙の告知がウェブのトップニュースで扱われたり、投票期間の前半で既に15万票を超え、1日平均1万票が加算されていくという、予想以上の反響に驚いています。世代によって選ぶ作品が大きく異なることにも驚きましたね。多分、この投票結果には、今の日本人の気分も現れると思うので、それも楽しみで」

最新作「レッドタートル」は“大人版ポニョ”である!?

 総選挙を通し、いかに日本人がジブリ作品を愛し、スクリーンで見たがっているか、を実感した。だからこそ「レッドタートル」がジブリ作品であると認知を高めて届けなければ、との思いも募る。

「確かにセリフがないなど、あまり見ないタイプのアニメですし、宮崎駿監督作品でもない。キャラクターも絵も世界観も、マイケル監督独自のもの。でも初めて作品を見たとき、僕はまさにジブリ作品だと思ったんですよ。非常に東洋的な人間と自然の関わり方、命とは、人間とは何かを考えさせるテーマは、完全にジブリのそれだな、と。『これは“大人版ポニョ”だ』とたとえた方もいましたね。だから一般のお客さん以上に、ジブリファンに響く作品じゃないかと思います」

 スタジオジブリが初めてフランスのスタジオ、海外の監督や会社と組んで制作していることは、作品完成まで“うすうす”知っている程度だったという。

「今後、スタジオジブリがどこの誰と共同で作るのか否か、僕には分かりません。いや、鈴木プロデューサー自身も白紙だとおっしゃっています。触手が動く素材があったら、その都度どのような形で作るか考え、やっていくでしょう。ただ個人的には僕もジブリ作品を待ち望んでいる。また新作が生まれたら、我々の手でぜひ配給させてもらいたい」

 スタジオジブリ総選挙が盛り上げる、フランス発の最新作「レッドタートル」が、スタジオジブリに、そしてアニメーション界に新風を吹き込むことを期待したい。


スタジオジブリ総選挙 中間発表!
「風の谷のナウシカ」(’84年)
※「風の谷のナウシカ」制作:トップクラフト
「天空の城ラピュタ」(’86年)
「魔女の宅急便」(’89年)
「もののけ姫」(’97年)
「千と千尋の神隠し」(’01年)
※8/13~20までの上位5作品 ※公開年度順
最終結果発表後にもっとも投票の多かった1作品を9/10(土)~9/16(金) TOHOシネマズ 六本木ほかで公開。
映画情報
映画「レッドタートル ある島の物語」
9/17(土)公開
 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門特別賞受賞作。荒れ狂う海に放り出された男が、ある無人島に流れ着く。島からの脱出をはかるも、見えない力によって島に引き戻されてしまう男の前に、一人の女性が現れる。

原作・脚本・監督/マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
脚本/パスカル・フェラン
アーティスティック・プロデューサー/高畑勲

今回、取材したのは…

伊勢伸平さん(東宝株式会社 映像本部 宣伝部長)
 東宝株式会社 映像本部 宣伝部長。スタジオジブリ作品では「猫の恩返し」(’02年)、「ハウルの動く城」(’04年)、「ゲド戦記」(’06年)、「崖の上のポニョ」(’08年)の宣伝に携わっている。

Interview=折田千鶴子

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