コラム

take219「火花」
芸人のリアルを見事に描写。お笑いの底力が涙を誘う!

 又吉直樹による第153回芥川賞受賞作で、2016年にネット配信ドラマとして制作され(翌年、再編集版をNHK総合で放送)、今年舞台化もされた作品の映画化。監督は原作者と同じお笑い芸人の板尾創路だ。

 売れないお笑い芸人の徳永(菅田将暉)は、営業で訪れた熱海の花火大会で先輩芸人の神谷(桐谷健太)と出会い、その常識を逸脱した話芸に引きつけられる。直後、徳永は神谷に弟子入りを志願。神谷はその代わりに何と自分の伝記を書いてほしいと言ってきた。本人は生きているのに伝記!? そんなツッコミも効果なく、徳永は神谷との日々をノートにつづり始める。類いまれな異才でありながら、どこかしら人情も感じさせる神谷と、そんな不思議なキャラクターに魅せられていく徳永だったが、やがて、些細なすれ違いから別の道を歩むことになる。

 まったく芽が出ない芸人とその相方、鬼才ぶりが災いしてなのか、漫才界の主流から弾き出されていく先輩とその相方。彼らの周辺でいつ訪れるか分からないブレークを夢見つつ、舞台に立ち続ける芸人たち。普段、テレビで笑いを取る人気芸人たちにも、そんな不遇の時代があり、また、水面下ではその何倍もの無名芸人たちが、今も笑いを取るための死闘を展開している。目に見える現実から、さらに過酷な見えない現実までが描かれる本作には、それでもお笑いに人生を懸ける人々の、純粋な情熱が描き込まれている。徳永の相方、山下が生活苦を理由に遂にコンビ解消を申し出る場面が泣ける。山下を演じる吉本興業所属の現役お笑いコンビ“2丁拳銃”の川谷修士が、抑制した演技で夢を絶ち切る苦しさを表現して、実にリアルなのだ。プロの役者も舌を巻くお笑い芸人の名演を、どうかお見逃しなく!(興行収入:8億円)

<映画 うわさの真の相>
解散ライブですすり泣きも。菅田将暉の大熱演が大きな感動を呼んだ日

最大の見せ場は、徳永×山下のコンビ“スパークス”が解散ライブで気持ちとは反対のことを言う漫才を披露するシーン。売れない日々を一緒に耐え抜いた山下への感謝を、「お前にはホント愛想が尽きたわ」と涙ぐむ菅田将暉の声が、次第に涙声に変わる様子を、撮影場所の神保町花月に集まったエキストラが見守り、会場からすすり泣きも漏れたという。

【映画情報】
火花 (17年吉本興業、東宝、電通、ジェイアール東日本企画、文藝春秋、朝日新聞社、KDDI、日本出版販売、GYAO)

9/15(土)
WOWOWシネマ 午後8:00~午後10:15
人間味あふれる天才肌の芸人と、彼に魅了されて弟子入りした若手芸人の交流を描く。ピースの又吉直樹の芥川賞受賞作を映画化。売れないお笑いコンビのボケ担当・徳永(菅田)は、営業で訪れた熱海の花火大会で先輩芸人の神谷(桐谷)と出会う。彼の天才肌の芸風と人間性にほれ込んだ徳永は、弟子入りを申し出る。神谷は自分の伝記を書くことと引き換えに、徳永の弟子入りを承諾する。

監督:板尾創路
出演:菅田将暉 桐谷健太 木村文乃 川谷修士 三浦誠己 加藤諒 高橋努 日野陽仁 山崎樹範
Text=清藤秀人


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