コラム

take214「おくりびと」
本木雅弘が実地で学んだ納棺師の所作が美しすぎる!!

 亡くなった人のために旅立つ前の身支度を整える納棺師。かつて映画では描かれることがあまりなかった職業にスポットを当て、人間の死にまつわる悲喜劇を繊細なタッチで描いて、見事に第81回のアカデミー外国語映画賞ほか、国内外で高く評価された異色の人間ドラマだ。

 ある日突然、楽団が解散してチェロ奏者として羽ばたく夢を絶たれた大悟(本木雅弘)は、妻の美香(広末涼子)と共に故郷の山形県酒田市に帰ってくる。そこで彼が出合ったのは納棺師という仕事。幼なじみや美香からバカにされ、嫌がられながらも、やがて、大悟は一人前の納棺師として頭角を現し、幼い頃家を出て行ったまま消息を絶っていた実の父親の死に接し、渾身の死に化粧を施すのだった。

 大悟が再就職した早々、納棺の解説DVDで遺体役を演じさせられたり、死後2週間が経過した独居老人の腐乱死体の処理を任されたり等々、前半はシュールで笑えるシーンが連続する。しかし、納棺師としての職業意識に目覚めていく大悟の人間的成長と、涙なくしては見られない父と子の再会が待つラストまでの展開は、ヒューマンドラマとして芳醇な香りを放つ。納棺師という耳慣れない職業の詳細に触れつつ、緩急を付けた映画全体の構成がアカデミー会員のハートをつかんだ結果の、栄えあるオスカー受賞だった。

 1996年、「納棺夫日記」を読んで感銘を受け、映画化の許諾を受けるため何度も著者の青木新門宅を訪れたという本木雅弘の情熱が、映画を成功へと導いた最大の要因。結果的にオリジナル作品となったが、撮入前、さらに数冊の専門書を読みあさり、本物の納棺師に数多く面談し、実地でトレーニングを受けたという彼の所作の美しさに、思わず引き込まれるはず。(興行収入:64億8千万円)

<映画 うわさの真の相>
オスカーの壇上で堂々英語でスピーチした監督。でも内心はびくびく

オスカー受賞の瞬間は劇的だった。プレゼンターのリーアム・ニーソンが封筒を開き、英題の「Departures!」を読み上げると、最初に壇上に駆け上がった滝田洋二郎監督は「とても幸せです。この作品は私にとって新たな出発となりました」と堂々と英語でスピーチ。でも本当は、会場にいたブラッド・ピットと目が合ってしまい緊張しまくりだったとか。

【映画情報】
おくりびと (08年映画「おくりびと」製作委員会)

8/13(月)
NHK BSプレミアム 午後9:00~午後11:15
遺体をひつぎに納める納棺師となった男性の姿を通して、家族の絆や人間の生と死を見つめる。第81回アカデミー外国語映画賞受賞。チェロ奏者の大悟(本木)はオーケストラの解散で職を失って、妻(広末)と故郷の山形に戻った。好条件の求人広告を見て面接に行った大悟は、仕事が納棺と分かり尻込みするが、社長(山崎)は強引に採用を決める。大悟は妻に真実を言えないまま仕事を始める。

監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘 広末涼子 余貴美子 笹野高史 吉行和子 杉本哲太 山田辰夫 峰岸徹 山崎努
Text=清藤秀人


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