コラム

take190「ブルージャスミン」

落ち目の元セレブ妻がやがて行き着く先は…

 ハイブランドの服に身を包み、きらびやかなジュエリーの輝きにも勝る美しさで、意気揚々とサンフランシスコ空港に降り立ったヒロイン、ジャスミン。しかしその実情は、ハンサムで裕福だった夫との生活も資産もすべて失い、今や自尊心だけが頼りの淋しい元セレブの、現実と内面が乖離した姿だった。

 人間の悲しい性(さが)を笑いに昇華するのが得意なウディ・アレンが、珍しく辛辣なタッチを見せたことで話題を呼んだ女性ドラマは、そんなふうに幕を開ける。自分とは違う庶民的な価値観を持つ妹、ジンジャーが住む質素なアパートにとりあえず身を寄せ、不慣れな仕事にも挑戦してみたジャスミンだったが、華やかな社交界で優雅に振る舞っていた頃の自分が忘れられず、地道な生活にも疲れ果て、次第に精神に異常をきたしていく。人間はかくも弱々しく、ライフスタイルの変化に適応できないものなのか!? ジャスミンの病的なまなざしは、誰もが陥りやすい憂鬱を表現していてとても人ごとではない。

 落ち目のセレブのやばい心情を巧みに演じるのは、これでアカデミー主演女優賞を手にしたケート・ブランシェット。痛々しいジャスミンが時折見せるおかしみが、ブランシェットの計算し尽くされた演技によって具現化される時のスリルは、映画最大の見せ場だ。元々生活臭を自然に身に付けているジンジャー役のサリー・ホーキンスとブランシェットの対比が鮮明だからこそ、ジャスミンの勘違いぶりが際立つ。同時に、離婚したジャスミンの夫、ハル役のアレック・ボールドウィン、ジャスミンの前に現れる理想的な恋の相手でエリート外交官役のピーター・サースガード等、ヒロインの欠点を際立たせる男優陣の好演も、見逃せない。(日本での興行収入:9920万円)

<映画うわさの真の相>
エルメス、ヴィトン、シャネルetc…“過去の栄光”の産物

 ジャスミンの“過去の栄光”を物語るのはそのファッション。サンフランシスコに降り立った時の彼女は、エルメスのスカーフを巻いたバーキンを手に持ち、ルイ・ヴィトンのトランクを積み上げ、シャネルのツイードスーツをうまく着崩している。それらが逆に過去との違いを強調していて、本作でのハイファッションは妙にネガティブなイメージなのだ。

【映画情報】
ブルージャスミン Blue Jasmine(13年米)

2/26(月)
NHK BSプレミアム 午後9:00~午後10:40
 資産家の夫と離婚して庶民の生活に舞い戻った女性が、再びセレブへの返り咲きを狙う。主演のブランシェットがオスカーを受賞。かつて“セレブの花”と呼ばれたジャスミン(ブランシェット)が実業家の夫と離婚し、全てを失う。庶民的な妹の質素なアパートで暮らし始めるが、やがて精神に異常をきたしてしまう。そんな中、ジャスミンはエリート外交官ドワイト(サースガード)と出会う。

監督:ウディ・アレン
出演:ケート・ブランシェット アレック・ボールドウィン サリー・ホーキンス ピーター・サースガード ルイス・C・K ボビー・カナベール
Text=清藤秀人


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