コラム

take187「ソロモンの偽証 前篇・事件」

戦場のような学園に通う中学生たちの叫びが聞こえる

 宮部みゆきが「小説新潮」で9年にわたり連載した同名の原作を「前篇・事件」と「後篇・裁判」(2/12(月)同枠で放送)に分けて映画化し、公開。「前篇・事件」ではバブル時代末期のクリスマスの朝、東京都内の区立中学の屋上から1人の男子生徒が転落死したことから、事件の複雑な背景と関わった人々のプロフィルがつまびらかにされる。

 転落死した柏木卓也はどんな経緯をたどって屋上に上がったのか? 生前、柏木の人の心を見透かすような言葉に傷つきながらも、何ら行動を起こさなかった後悔から同級生の藤野涼子が真相の究明に乗り出す。単純に自殺と断定する警察は信用できず、クラスでも札付きの不良少年、大出俊次を名指しした殺人の告発状が届く中、涼子は柏木の小学校時代の友人と名乗る他校生、神原和彦らの協力を得て学校内裁判の開廷を決意する。

 文庫で全6巻からなる群像劇を2篇の映画にするため、同じく話題の小説を映画化した「八日目の蟬」(11)で多数の映画賞に輝いた成島出監督は、人物の役割を可能な限り削減。そうすることで、主人公、藤野涼子の目を通して生徒たちの表面には現れない傷ついた心と、彼らを放置する大人社会のよどみが徐々に透けて見えてくる構図が分かりやすく描かれていく。

 殺伐とした戦場のような学園内で、懸命に自分の居場所を探し求める彼ら中学生が、いかに観客の共感を得られるか。そこにも神経を注いだ成島監督は、メインキャラを演じる俳優をオーディションによって厳選。そうして選ばれた役名と同じ名前の藤野涼子以下、10代の新人俳優たちが発散する若さと、ひりひりするような繊細さが前篇を成功に導き、学内裁判の全貌が描かれる「後篇・裁判」へと観客の興味をつないでいる。
(興行収入:7億2800万円)

<映画うわさの真の相>
1万分の1の逸材。役名と同じ藤野涼子、彼女が学んだこととは?

 総数1万人の候補者の中から主演の座を射止めた藤野涼子は、映画の公開に合わせたメディアの取材に対して、以下のように答えている。「もし、この映画に出ていなかったら、子供のまま、相手がどう思っているかなど何も考えず、わーわー言っている女の子になっていたと思うんです。この映画に出演して、学ぶことの大切さが身に染みました」。

【映画情報】
ソロモンの偽証 前篇・事件 (15年「ソロモンの偽証」製作委員会)

2/5(月)
NHK BSプレミアム 午後9:00~午後11:03
 中学の校庭で生徒が転落死した事件の真相を解明するため、生徒たちが裁判を開く。宮部みゆきの小説を映画化した2部作の前編。クリスマスの朝。校庭で男子生徒の転落死体が発見される。飛び降り自殺と結論付けられるが、殺人だとする告発状が届いたことで大騒ぎになる。そんな中、亡くなった生徒の同級生の藤野涼子(藤野)は、告発状で名指しされた生徒を被告人に校内裁判を開こうとする。

監督:成島出
出演:藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈 清水尋也 富田望生 前田航基 望月歩 西村成忠 西畑澪花 若林時英 加藤幹夫 石川新太 佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美
Text=清藤秀人


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