コラム
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take141「殿、利息でござる!」

困窮した宿場町を救ったのは地域住民たちの共同体意識!!

 歴史学者、磯田道史の著書「無私の日本人」(文藝春秋刊)をベースに、江戸中期の仙台藩・吉岡宿に実在し、厳しい年貢の取り立てや労役のため財政が困窮した宿場町を救済しようと、町民たちが知恵を絞り合い実行した金貸し事業の全貌を描く異色の実録時代劇だ。

 絞り出したアイデアとは、私財を投げ打ち工面した大金を藩に貸し付け、そこで派生する毎年の利子を全町民に還元して地域を活性化させようというもの。

 搾取される側が搾取する側に回るという逆転の発想である。とはいえ、当時の1000両(今なら約3億円!)という大金を貧乏な宿場町の町民たちが集めるのは大変だったはず。ところが、である。ここが映画の見どころで、まず、もうかっている豪商たちから秘密裏に出資を募り、やがて、うわさを聞きつけた金持ちたちが名誉欲に駆られて財布の紐を解くことに。そうして集まったいわゆる救済基金は、利潤のすべてが幕府による年貢取り立ての最大の犠牲者である農民や奉公人に割り当てられるため、出資者の懐は全く潤わない。それでも1000両集まったのは、商人も農民も同じコミュニティーの仲間だという意識が徹底されていたため。そこが、格差が広がる現代社会を生き抜く人々の琴線に触れ、映画をヒットに導いたのだと思われる。

 やはり磯田道史原作の映画化で、代々加賀藩の御算用者(経理担当)を務める武士がそろばん片手に切迫する家計を立て直す「武士の家計簿」(10)や、通常の倍の早さで参勤交代を命じられた弱小藩の孤軍奮闘を描く「超高速!参勤交代」(14)などと同様、現代的視点で切り取られた新・時代劇ブームをけん引するのが本作。RCサクセションの主題歌“上を向いて歩こう”も時代をつなぐ絶妙なツールになっている。(興行収入:13億7千万円)

<映画うわさの真の相>
映画のラストを飾るのはフィギュア界の王子様 羽生結弦の仙台藩主

 ラストで仙台藩第7代藩主、伊達重村を演じるのはフィギュアスケート界の王子様、羽生結弦。中村義洋監督の「役者陣を圧倒する役者以上の存在」との要望に応え、故郷の仙台に実在した人物の感動秘話に共鳴し、出演を快諾した羽生選手。彼の出演は撮影当日まで明かされていなかったため、リハーサルに姿を現した時のざわめきは半端なかったとか。

【映画情報】
「殿、利息でござる!」(16年「殿、利息でござる!」製作委員会)

2/18(土)
WOWOWシネマ 午後8:00~10:15
 財政難に陥った宿場町が、奇想天外なアイデアで町を再生させた実話を描く時代劇コメディー。原作は「武士の家計簿」の磯田道史。江戸時代中期。重税のために破産や夜逃げが相次いでいた仙台藩の吉岡宿。ある日、酒蔵の十三郎(阿部)は知恵者の篤平治から、大金を藩に貸し付けて、その利息で町を再建するアイデアを聞かされる。話に乗った十三郎だったが、計画の達成には千両が必要だった。

監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ 瑛太 妻夫木聡 竹内結子 千葉雄大 羽生結弦 松田龍平 草笛光子 山崎努 寺脇康文 きたろう 橋本一郎 中本賢 西村雅彦

Text=清藤秀人



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