闘う男の素顔にトライ!

連載

「闘う男の素顔にトライ!」#5~福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ)~
ジャパンラグビートップリーグで活躍する選手にクローズアップ!

 日本開催のラグビーワールドカップ(RWC)2019まで、あと2年余り。昨年8月に開幕したジャパンラグビートップリーグは、日本代表を目指す選手たちがしのぎを削る、文字通りRWCへの扉を開ける鍵となってくる。

 でも、どんな選手がいるのか? 果たしてラグビーの魅力はどこなのか? イマイチよく分からない。そんな人も多いだろう。

 そこでインターネットTVガイドでは、日本代表選手や代表入りを目指す選手に取材を敢行。より身近にラグビーを知ってもらおうと、選手の人生に影響を与えた<ヒト><モノ><コト>にクローズアップすることで、選手の素顔やアスリートならではの心情に迫るインタビューを連載中。

 第5回となる今回は、その戦歴、プレースタイルなどから“野武士軍団”の異名を持つパナソニック ワイルドナイツに所属する福岡堅樹選手。筑波大学在学中の2015年にラグビーワールドカップに出場し、試合を大きく動かした“スピードスター”。東京オリンピック後は幼少の頃からの夢である医師の道を志す文武両道の若きトライゲッターに、ラグビーに目覚めたきっかけや、ラグビーにハマった理由、気になるプライベートを聞いてみよう。

──ラグビーとの出合いは5歳の頃。福岡県は玄海ジュニアラグビークラブの出身で、本連載の第1回に登場したサントリーサンゴリアスの中靏隆彰選手も同スクールに所属していました。

「父親の勧めでスクールに通いました。父が高校と大学でラグビーをやっていたため、ずっと“息子と一緒にラグビーをやりたい”という夢を持っていたようで。幼稚園生の集まりですからラグビーの体をなしてはいないんですけど、小さい頃からかけっこが得意だったこともあり、緑の芝生の上を走る爽快感にハマりました」

──お父さんは歯科医で、おじいさんは開業医。その影響で子どもの頃から医師になりたいと思っていたそうですね。

「祖父は内科医で、いわゆる“町のお医者さん”だったんですけど、幼いながらも患者さんに接する態度やかける言葉、町の人たちから信頼されている姿を間近で見て、“自分もこういう人になれたらいいな”と憧れて。そこから“じゃあ、どうすれば医者になれるか?”と考え、将来は医学部に進むべく勉強しようと」

──高校は、県内屈指の進学校で文武両道の県立福岡高校へ。俊足で鳴らし、50m走では5秒8を記録!(日本記録は北京オリンピックの銀メダリスト・朝原宣治氏が持つ5秒75)

「中学生の頃から足の速さだけは自慢でしたが、体が小さかったためラグビーで上を目指そうとは思っていませんでした。でも、幸いなことに高校では1年生からレギュラーで出させてもらい、3年生の時には花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会)にも出場することができて。中学まで通ったスクールの先生からは『とにかくラグビーを楽しむ』ということを教わって。高校の監督さんからはメンタル的な部分や闘う姿勢を鍛えられた。いい指導者に出会えたことで、勉強とラグビーを両立できたと思います」

──高校時代は花園出場の一方で、けがにも悩まされ、2年生で左膝、3年生では右膝のじん帯を断裂しました。

「花園の県予選はテーピングでガチガチに固めて試合に出場して、本番を合わせると3カ月間ほどじん帯がないままプレーしたんです。その際にお世話になったのが、整形外科の先生で。何事もポジティブに考えさせてくれる先生との出会いで、より医師を目指そうという気持ちが強くなりました。同時に、けがをしたからこそ見えたものもあり。花園出場で満足することなく、大学でもラグビーを続けてみようと」

──卒業後は筑波大学に進学。尊敬するおじいさんから言われた「才能は社会に還元する責任がある」との言葉に突き動かされたと聞きます。

闘う男の素顔にトライ!

「ラグビーと医師の道、どちらを選ぶかで悩んでいた時に、その言葉を掛けてもらって。孫へのひいき目も多分にあるとは思いますが(笑)、“どちらも諦めずに頑張ってみよう”と。国立大の医学部で強いラグビー部がある筑波大の医学群(同大学は医学群と呼ぶ)を目指すことにしました。だけど、センター試験は医学の基準に全然足りず…。もともと一浪は覚悟していたものの、浪人した翌年の再挑戦でも、残念ながら前期二次試験で不合格に。その時は医学を取るか、ラグビーを取るかの二者択一を迫られて、相当悩みましたね」

──選択肢は、二浪して筑波大の医学を再び受け直すか、合格の可能性の高い他の国立大の医学部を受験するか。もう一つは筑波大の他の学群を受けるか…。

「ラグビーの強い私立大学の医学部を受けることも考えましたが、金銭的に親には負担を掛けたくなかったんです。それで“何を選んだら、一番後悔しないだろう?”と悩んだ末に、“今はラグビーがしたい”と思って。1年間ラグビーと離れていたことで、その気持ちが勝ったため、筑波大学の情報学群を受験することにしました。ここが現時点での、僕の人生の分岐点でした」

──そこまでして入りたかった筑波大ラグビー部の魅力とは?

「型にはめられないところでしょうか。大学ラグビーは学校ごとのカラーがしっかりありますが、筑波は本当に自由で。高校生の頃から“こんな環境で成長できたら楽しいだろうな”と憧れていました。実際、特に僕の代は、僕を含めて“絶対に筑波でプレーしたい”という強い意思を持って筑波に入ってきた一般入試の浪人生が半分くらいいて。そういう選手の気持ちがチーム力にもつながっていたと思います」

──けがによる挫折や受験という困難を乗り越える。ラガーマンに限らずアスリートはポジティブに物事を捉える方が多いですが、福岡選手はどうやって自分をコントロールしているのですか?

「膝を手術した際、ネガティブな気持ちになりがちなところ、先ほどの先生がポジティブになれる言葉を掛けてくださったことで、『クヨクヨしている時間があるなら前に進もう!』と考えられるようになって。“時間を無駄にしない”という意味では、ずっと文武両道という限られた時間の中でやってきたことで、自然と培った部分もあるかもしれません。あとは…勉強も練習もそうですが、“苦”に思わないこと。義務だと思うとプレッシャーになるし、身にならない。疲れた時は休み、眠たい時には寝るという切り替えも大事かなと」

──学生時代は、どんな勉強法を?

「それが家では勉強をほとんどやっていなくて…(笑)。集中力が長く持つ方ではないので、授業中に自分に必要な部分をしっかり聞いて、理解を深めることを繰り返しやっていました。ラグビーもそうですが、集中力と反復練習が大事だと思います」

──気持ちを切り替える際に、努めて行っていることは何かありますか?

「今は食後にコーヒーを飲むことですかね。高校時代はバンド活動をしていて、それが勉強のいい切り替えになっていました」

──忙しい中、3歳から中学3年生までピアノも習っていたと。

「そうですね。中学生最後の発表会の直前に試合で突き指をしたので、痛み止めを飲みながら弾いた記憶があります(笑)。バンドではキーボードとドラムをやっていて、Mr. Childrenやflumpool、銀杏BOYZなどをカバーしていました。高校は伝統を重んじる気風でありながら、生徒の自主性に任せてくれましたし。両親も結果さえ出していれば、うるさく言われなかった。そこは自分の性格にも合っていたし、ありがたかったです」

──福岡県人は豪放磊落(らいらく)といいますか。目立ちたがりでお酒が強く、亭主関白なイメージが。ご自身はいかがですか?

「試合でも大舞台でお客さんがたくさんいる方が燃えますし、そういう(お酒の)席も大好きです。亭主関白かどうかは…自分ではよく分からないですけど、どちらかと言えば引っ張っていきたいタイプ。九州の男性は亭主関白に見えて、実は女性にうまく乗せられている場合も多いので、僕もそっち側かもしれませんが(笑)」

──J SPORTSのサイトに掲載されているプロフィールによれば、好きな女性のタイプは小島瑠璃子さん、国仲涼子さんだとか?

「(笑)、お二人とも奇麗な方だなと。あと最近では有村架純さん。同い年なので応援しています」

──お話を聞いていると、勉強もスポーツも音楽もでき、非の打ちどころがない。同性としては少々イラッとしますが(笑)、弱点はないんですか?

「(笑)。あります! パクチー。これだけは食べられません。あと、ものすごく絵が苦手で…というか、美術センスは皆無ですね。ファッションとかも全然分からない。ほかにも、まだまだ弱点がたくさん。その代り、“スピード”という武器を与えられたんだと思います」

──現在は、そのスピードという才能をチームに還元。19年のワールドカップ、翌年開催される東京オリンピックの後は、医師として社会貢献することを決めています。

「この二つの大会終了後は、スポーツ整形の医師を目指そうと思っています。出場できたなら27、28歳。大学2年生の春に日本代表に呼ばれてからは“もっと上を目指したい”という気持ちが高まってきたんですけど、どこかで区切りを付けなければならないと決めていましたし。経験的にもフィジカル的にもキャリアのピークになると思うので、そこで成功できれば悔いはありません」

──トップリーグ、日本代表の試合に出場しながら、医師という目標に向けて日々勉強の毎日。何よりその継続力に頭が下がりますが、最終的なビジョンは?

「これだけ公言していれば後には引けませんからね(笑)。自分に発破をかけないとかなわないくらい高い目標なので、今は時間の許す限り、通信制の予備校で学んでいて。最終的な夢は…日本代表のチームドクターになれたらいいですね。僕自身がけがをした時の経験や選手としての経験も生かせますし。日本で医師に転向したアスリートはまだいないので、僕がパイオニアになりたい。まだまだ先の話で構想段階ではありますが、夢をかなえるために頑張りたいです」

 今季のトップリーグを観戦すれば、2年後、世界中のラグビーファンが注目する、大舞台でプレーする日本代表選手がおのずと見えてくる。この1月6日より、レッドカンファレンス、ホワイトカンファレンスの上位チームによる総合順位決定トーナメントが開催。競技場に行くことのできない人は、ぜひJ SPORTSで!

闘う男の素顔にトライ!
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【昨日の敵は今日の友!?…ラグビー選手交友録】
「パナソニックであれば、高校時代からの付き合いになる藤田慶和。ほかに山沢拓也とか松田力也。他チームでは同い年の松島幸太朗(サントリーサンゴリアス)。イケメン枠では(笑)、トヨタ(自動車ヴェルブリッツ)のキャプテンで“姫ちゃん”こと、姫野和樹。このへんは、僕が(日本ラグビー協会の若手育成計画である)ジュニア・ジャパンに選ばれた時のメンバーで、仲がいいです。もう一人…僕が初めて代表に呼ばれた時に同部屋だった五郎丸歩さん(ヤマハ発動機ジュビロ)。今でも緊張しますが、同郷のよき兄貴です」
【プライベートのお気に入りアイテム!】
「コーヒーは豆から挽いて飲みます。遠征先にも豆を持っていくので、代表選手のコーヒーブームは、僕の影響かと(笑)。ルーティーンじゃないですけど、スイッチをオフにしてリラックスするための、一つのタイミングになっていますね」(ちなみに、本連載の第3回に登場の東芝ブレイブルーパス・德永祥尭選手は「福岡選手の影響」と明かしていました)
【プロフィール】
福岡堅樹(ふくおか けんき)
1992年9月7日生まれ。福岡県出身。パナソニック ワイルドナイツに所属。ポジションはウィング。身長175cm、体重83kg。A型。ニックネームは「けんき」。日本が誇るトライゲッター。筑波大学在学中の2015年は15人制でワールドカップに出場してスコットランド戦に出場、パナソニック入団後の16年は7人制男子日本代表としてリオデジャネイロ五輪に出場し、ニュージーランドを倒すなど4位に貢献。ワールドカップとオリンピックと両方に出場した唯一の選手。将来の夢は医師で、来る東京五輪後は、再び大学に進学し、医学の道を志すことを決めている。
【ジャパンラグビートップリーグ17/18 試合放送予定】
「第55回日本ラグビーフットボール選手権大会」
1月6日(土)午後6:00~ 準決勝「トヨタ自動車 VS パナソニック」(J SPORTS 3)
1月6日(土)午後8:00~ 準決勝「サントリー VS ヤマハ発動機」(J SPORTS 3)
1月13日(土)午後7:00~ 決勝

国内最大4チャンネルのスポーツテレビ局J SPORTSでは、ジャパンラグビートップリーグ17/18の総合順位決定トーナメントを全試合放送

取材・文/橋本達典
撮影/中越春樹

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