気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

元NHKドキュメンタリスト七沢潔、大森淳郎制作番組の上映&トークイベントを開催

 2011年3月の東日本大震災から2カ月後に放送されたNHKのETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月」は、数多く作られた震災番組の中でも特に高く評価されました。毎年、3月11日が近づくと思い出すドキュメンタリーです。福島第一原発事故の発生4日後から(水蒸気爆発から3日後)、報道陣のいなくなった避難指示区域に入って取材を継続し、放射能汚染地図を作成するなど局地的に高濃度の放射能に汚染されたホットスポットの存在を伝えました。事故後の福島を丁寧に記録した番組、およびその取材活動は、文化庁芸術祭大賞、石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞、日本ジャーナリスト会議大賞など数多くの受賞を重ねてもいます。この番組で初めてタッグを組んだのが二人のNHKディレクター、七沢潔氏と大森淳郎氏。それぞれ異なるアプローチでドキュメンタリー番組の制作してきた二人が同番組の取材で融合し、これまでに類を見ないドキュメンタリーの誕生につながりました。30年以上にわたってNHKで社会的に意義のあるドキュメンタリー制作に携わり続けてきたお二人が昨年、そろって定年を迎えたとのこと。しかしながら、七沢氏は今なお福島に通い続け、大森氏は避難者の自殺、放射線の動物への影響を追跡するなど、大切なのはその後であることを伝え続けています。そのお二人をゲストに迎える興味深い2つのイベントがこの程、開催されます。

 1月27日(土)には、早稲田大学ジャーナリズム研究所とJapan Docs主催の「Wase docu5 テレビドキュメンタリー作品の上映とトーク『この日本の片隅で TVドキュメンタリスト 七沢潔と大森淳郎のメッセージ』」が、また2月2日(金)には「Japan Docs Presents ドキュメンタリー・トーク ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図』その後 福島原発事故から7年を前に」がそれぞれ行われます。

 早稲田大学・小野講堂で行われる「この日本の片隅で TVドキュメンタリスト 七沢潔と大森淳郎のメッセージ」では、上述「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図』――」をはじめ二人の代表的なドキュメンタリー5番組を上映。NHKで長らくドキュメンタリー制作の身を置かれ、テレビドキュメンタリー史上に残る数々の番組を残してきた七沢潔氏と大森淳郎氏。「同じ時代、同じチームに属しながらもそれぞれの作風を追及した二つの個性。二人が伝えたメッセージを、作品と対話を通じて、今ここに読み解く」ことをテーマとしています。

 一方、渋谷のLoft9 Shibuyaを会場に行われる「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図』その後――」は今回、番組上映はありませんが七沢氏、大森氏のほか関係者をトークゲストに招いて、原発事故から7年後の今について語り合います。第一部は、今なお現地で調査や住民支援を続ける科学者たちに最新の現状認識や課題を聞きます。第二部は、大森淳郎氏が事故5年後に制作したドキュメンタリー「赤宇木(あこうぎ)」(2016年3月 NHK BSプレミアムで放送)でフォーカスされた浪江町赤宇木のその後を、今野義人赤宇木区長を迎えて長い時間軸で考えていきます。第三部はゲストと参加者とで、残された課題とメディアの責任について対話していきます。進行役は、昨年の「福島映像祭2107」で上映された映画「Life 生きてゆく」を監督した映像ディレクターの笠井千晶氏とこれらのイベントを企画・主催するJapan Docsの渡辺勝之氏。こちらは有料イベントですが、貴重な報告を聞くことは今年の3.11を迎える上で参考になるはずです。


この日本の片隅で
TVドキュメンタリスト 七沢潔と大森淳郎のメッセージ
テレビドキュメンタリー作品の上映とトーク
日時/1月27日(土)午前11時~午後7時30分予定(開場/午前10時30分)
会場/早稲田大学小野記念講堂 27号館小野梓記念館地下2階
   東京都新宿区戸塚町1-103
参加費無料(事前申し込み不要)

トークゲスト:七沢潔(NHK放送文化研究所 上級研究員 元NHKディレクター)
       大森淳郎(NHK放送文化研究所 特任研究員 元NHKディレクター)
聞き手:野中章弘(早稲田大学教授) 大間千奈美(早稲田大学4年)

<スケジュール>
◇午前11:00~
「ETV特集『ひとりと一匹たち-多摩川・河川敷の物語』」
 ■2009年3月放送 ディレクター/大森淳郎)
 *台風を機に多摩川の河川敷に暮らすホームレスを取材し、現代社会の問題を投げかけた。

◇午後0:40~
「ETVスペシャル『貘さんを知っていますか?-沖縄に生まれ、大和で生きた詩人・山之口貘の軌跡』」
 ■2004年2月放送  ディレクター/七沢潔
 *沖縄生まれで「大和」に没した詩人・山之口貘のユーモアの中に鋭い社会批評を忍ばせた彼の詩と人生をたどる。

◇午後2:10~ トークコーナー

◇午後2:40~
「ETV特集『モリチョウさんを探して-ある原爆小頭児の空白の生涯』」
 ■1993年8月放送  ディレクター/大森淳郎
 *都内の病院で亡くなった中年男性モリチョウさんは胎内で被爆し原爆水頭症だった。彼の波乱の生涯を追い、原爆の影を追った。

◇午後3:40~
「ドキュメンタリー’90『原発立地はこうして進む-奥能登・土地攻防戦』」
 ■1990年5月放送  ディレクター/七沢潔
 *石川県、能登半島先端の寒村。原発賛成と反対に分かれ互いに見張り合う村の人々の苦悩を描く。

◇午後4:40~
「ETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図-福島原発事故から2か月』」
 ■2011年5月放送  ディレクター/七沢潔 大森淳郎
 *福島原発事故発生の直後から現地に入り、一線の科学者たちと詳細な放射能汚染地図を作成。調査プロセスの中で出会った人々の混乱と苦悩を伝えた。

◇午後6:20~ トークコーナー
Japan Docs Presents ドキュメンタリー・トーク
ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」その後
福島原発事故から7年を前に
日時/2月2日(金)午後7時~10時予定(開場/午後6時30分)
会場/LOFT9 Shibuya
   東京都渋谷区円山町1-5 キノハウス1F

トークゲスト:今中哲二(京都大学 原子炉実験所)
       木村真三(獨協医科 大学准教授)
       今野義人(福島県浪江町 赤宇木区長)
       七沢潔 (NHK放送文化研究所 上級研究員 元NHKディレクター)
       大森淳郎(NHK放送文化研究所 特任研究員 元NHKディレクター)
進行:笠井千晶(映像ディレクター、映画「Life 生きてゆく」監督) 渡辺勝之(Japan Docs)

料金/一般:予約1000円、当日1300円
   学生:予約500円、当日800円
   別途要・ドリンク代(500円以上)
HP  http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/80184
関連リンク
多様な映像を通してフクシマの今を伝える「福島映像祭2017」開催。「Life 生きてゆく」で映画とテレビの新たなループも発見
http://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170915_01.html
NHK文研フォーラム2017でテレビ・ドキュメンタリーのシンポジウムを開催
http://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170204_01.html
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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