気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

刺激満載! 若手制作者の登竜門。新たに開催された「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム in なごや」をレポート

 公益財団法人 放送文化基金が取り組む「制作者フォーラム」。地域放送局の組織や系列の枠を超えて制作者同士の自由な意見交換、交流の場を設けることをねらいに続いてきたイベントです。1996年の九州放送映像祭&制作者フォーラム(九州・沖縄)を皮切りに、1997年から北日本制作者フォーラム(北海道・東北)、1999年から中四国制作者フォーラム(中国・四国)、2000年から北信越制作者フォーラム(北陸・長野・新潟)と、各地域で回を積み重ねてきました。そして今年11月、愛知・岐阜・三重制作者フォーラムを新たに名古屋で開催。CBCテレビ、東海テレビ、メ~テレ、中京テレビ、テレビ愛知、ぎふチャン、三重テレビ、さらにNHK名古屋放送局、同 岐阜放送局、同 津放送局の、東海3県にある放送局の若手制作者が中京テレビ本社に集いました。開会に先立ち、放送文化基金の崎元利樹専務理事が「4つの地域以外でもこういう場を広げたいと思っていました。東海地区の皆さんから快諾いただき、かねてよりの思いが今日実を結びました」と挨拶。東海地区といえば、前週行われた「地方の時代」映像祭で放送局部門10本の入賞番組のうち3本を占め、ドキュメンタリー制作において高い実績を誇っています。そんな注目エリアで新たに始まる制作者フォーラムを是非見たいと思い、今回特別に見学させていただきました。

 制作者フォーラムは、ミニ番組コンテストと審査員ゲストによるトークセッションの二部構成。審査員ゲストには、テレビ東京制作局プロデューサー・演出を強める高橋弘樹氏、LLC創造の森代表で日本テレビ元「NNNドキュメント」プロューサーの日笠昭彦氏、椙山女学園大学文化情報学部教授の脇田泰子氏を迎えました。
 ミニ番組コンテストは上記10局が、昨年11月から今年10月末までに実際に放送したニュース企画や番組企画を各1本ずつエントリー。尺は15分以内、テーマは自由、制作者は35歳以下または現場経験5年以下が条件となっています。コンテストは、制作担当者が番組概要を説明した後すぐ上映し、審査員と一緒に会場全体で作品を鑑賞します。観終えた後、スクリーンの横に立つ番組担当者に審査員がコメントしていきます。全部で約2時間のコンテストは、観ている分には十分集中できますが、観られる側の若い番組担当者にとっては普段と違う緊張が張りつめる時間です。若手にとって兄貴分的な高橋氏ですら、各作品を褒めたたえながらも「寄りの絵を1つ入れるとなお良かったかなと思います・・・」など、細かく鋭い意見を「しいて言えば」と連発していました。ドキュメンタリー制作の第一人者である日笠氏は、構成上の重要なインタビューに対し「あの言葉を起点にもう1本、2本作れるのでは」と高度なレベルを要求。かつてNHKで記者経験がある脇田氏も、基本情報が抜けていることに対して基礎データの重要性を説きました。三者三様の批評は、若手制作者に普段とは違う新たな気づきを与えたはず。こうした審査員の温かくも厳しい指摘こそが、この制作者フォーラムのなんといっても真骨頂です。

 コンテンストに続いて行わる審査員ゲストによるトークセクションは、高橋氏が進行役を託され、「番組づくりの“キソ知識”」をテーマにフリートークが繰り広げられました。事前に集められたトークリストの中から、初めに「その後の番組制作につながった若い頃の失敗談。『しくじり先生』」という項目を選択。高橋氏が、入社時の先輩である同局の伊藤隆行プロデューサーとのエピソードを披露して自ら口火を切ると、日笠氏もこれから話すことはツイッターなどには上げないでほしいと前置きして、自身が今も後悔してというあるドキュメンタリー番組の制作現場の裏側を明かしました。脇田氏もNHKの女性記者1期生として配属された当時の苦労話や、Jリーグチェアマンになる前の川渕三郎氏を取材した際の失敗談を紹介し、最初のお題から次々飛び出す興味深いしくじりトークに会場はすっかり聞き入っていました。

 次に、高橋氏が「ドキュメンタリーや企画のネタの探し方。日々の生活のアンテナの張り方」という項目を選ぶと、「みなさん、映画『人生フルーツ』はご存知ですよね」と、会場にいた東海テレビの伏原健之氏を紹介し、発言を促す場面も。突然振られた伏原氏は、日ごろニュース番組にかかわる中でいかに企画を見つけどう昇華させていくかを語ったほか、「以前、高橋さんが言っていましたが、テレビは映画と違って失敗できるのが最大の利点。僕もサラリーマン根性でやっています」と大胆にアドバイスし、高橋氏の機転に見事に応えました。このほか「インタビューの極意。対象者の探し方や関係値作りについて」「見る側、作る側の高齢化に対する、若手スタッフの向き合い方」などの項目でも、参考になるエピソードが次々と披露されました。会場には若手制作者のみならず、管理職クラスの方や直接制作に携わっていない編成担当者など幅広く参加していたようで、いずれの立場でも得られる物が多いと感じました。

 懇親会を兼ねた表彰式では、10番組の中から、中京テレビ「前略、大徳さん」、東海テレビ「スタイルプラス 東海仕事人~すし職人~」、NHK津放送局「ニュースシブ5時 日本一の美ボディー県・三重県!?その秘密を探る」の3番組が優秀賞として表彰されました。高橋氏は「どの番組も視聴者を楽しませよう、見てもらいたいという熱を感じた」と感想を述べた一方で、日笠氏は「昨年、高橋さんと(審査員として)行った北信越制作者フォーラムは、全体に粗削りだけどすごくとんがった企画がありました。今日は東京か大阪で見ているかと思うぐらいみんなまとまっていたので、東海3県のポジションの何か痕跡みたいものが見られると良かったのかなと、あえて“小言”を言わせてもらいます」と締めました。しかし、この小言こそが、若き後輩たちへの期待の表れであり、むしろ温かい、最高のエールのだと思います。このフォーラムの継続と若手制作者の飛躍を期待せずにはいられません。


愛知・岐阜・三重制作者フォーラム in なごや
(2017年11月17日開催)
[優秀賞作品]
中京テレビ放送 「前略、大徳さん」(10月22日放送)
受賞者/守屋泰斗
*秋祭り開催中の東山動植物園で、ネクストブレークアニマルなどを紹介。

東海テレビ放送 「『スタイルプラス』東海仕事人列伝~すし職人~」(2月5日放送)
受賞者/鵜澤龍臣
*1日3組限定、完全予約制。科学的な視点で素材にこだわる江戸前寿司職人に密着。

NHK津放送局 「『ニュースシブ5時』 日本一の美ボディー県・三重県!?その秘密を探る」(4月5日放送)
受賞者/原 英輔
*日本一スタイルが良いのが三重県と判明。これを確かめるため美ボディーの秘訣を徹底調査。

※上記3番組は、来年2月17日(土)に予定されている「全国制作者フォーラム2018」で、他地区の入賞番組とともに上映会に出品されます。
関連リンク
第37回「地方の時代」映像祭2017が、11月11日から関西大学で開催
http://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20171103_01.html
第43回「放送文化基金賞」発表! ドキュメンタリー最優秀賞は「NHKスペシャル ある文民警察官の死」
http://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170616_01.html
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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