気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」など「ザ・ベストテレビ2017」でドキュメンタリーの秀作を一挙公開!

 NHK BSプレミアムで毎年、2日にわたり放送される「ザ・ベストテレビ」。国内の主な番組コンクールでドキュメンタリー部門の頂点に立った番組がNHK、民放を問わず一挙に編成される特別なプログラムです。放送界を代表する6つのコンクール、計7部門の最優秀番組をあらためて見ることが出来ます。また、それぞれの番組制作者が登場しゲストと語り合うことで、作品の内容や背景を詳しくより聞けるのもうれしいところ。今回のゲストは、作家・映画監督の森達也氏とノンフィクション作家の梯久美子氏で、ディープなトークが交わされそうです。重複受賞があった今年は都合6番組、これらを順に紹介していきましょう。

 1作目は、文化庁芸術祭賞のテレビ・ドキュメンタリー部門 大賞に輝いた東海テレビ「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」。当コーナーでも幾度となく紹介してきた映画「人生フルーツ」のテレビ版、いわばオリジナル版です。主人公の建築家・津端修一さんとその妻・英子さんの穏やかにこつこつと時を重ねていく暮らしを描き、人間にとって何が大事かを見つめた秀作と評価されました。今年1月に公開された映画版は今なお上映が続き、多くの人の心を癒すとともに深い感動を与え、観客動員もまもなく20万人に達しようかという、ドキュメンタリー映画としては空前のヒットとなりました。なお、同映画は先ごろ、平成29年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)の優秀賞受賞が確定したばかりです。

 2作目と3作目は、日本民間放送連盟賞のテレビ教養番組最優秀のWOWOW「ノンフィクションW『撮影監督ハリー三村のヒロシマ~カラーフィルムに残された復興への祈り~』」と同 テレビ報道番組最優秀のQAB 琉球朝日放送「枯葉剤を浴びた島2~ドラム缶が語る終わらない戦争~」です。日本民間放送連盟賞の番組部門は、ラジオとテレビに、さらにテレビは報道、教養、エンターテインメント、ドラマと4つのカテゴリーで顕彰されますが、それらの中から、上記2部門のドキュメンタリーが「ザ・ベストテレビ」で紹介されています。
 教養番組「ノンフィクションW『撮影監督ハリー三村のヒロシマ――』」は、原爆投下半年後の広島をフィルムに収めた映画カメラマン・三村明の人生と映像作品に迫っています。日米のはざまに立たされた彼の姿を、語り過ぎずに見る人に考える余地、余韻を残す構成が高く評価されています。映画評論家でクリエイティブディレクターの清水節(たかし)氏が企画制作しています。
 報道番組「枯葉剤を浴びた島2――」は、沖縄市のサッカー場などから発見された大量のドラム缶から、ベトナム戦争で米軍が使った枯れ葉剤の成分が検出されたことを発端に、戦争に翻弄(ほんろう)される沖縄の現実を描いています。沖縄県民にとって命に関わる問題を追求。現在と将来にわたって続く課題を浮き彫りにし、基地問題の本質など沖縄のテレビ局として伝えることの強い意識を感じられることでも評価されました。取材にあたった島袋夏子ディレクターは、かつて「QABドキュメンタリー 扉2014『裂かれる海~辺野古 動き出した基地建設~』」で第52回ギャラクシー賞テレビ大賞を受賞。同局として初めて大賞受賞したのに続き、沖縄が直面する課題を伝え続けています。

 翌日放送される第二部。4作目は当コーナー初回で紹介した「地方の時代」映像祭 グランプリの山陽放送「島の命を見つめて~豊島の看護師・うたさん~」。瀬戸内海の離島で働く看護師の姿を通して、島に暮らすお年寄りの「生と死」を見つめたドキュメンタリーです。離島医療のみならず日本全体の超高齢化と医療問題を浮き彫りにし、地方発ならではの視点です。島唯一の診療所は閉鎖の危機にありましたが、この番組の放送がその存続に一役買うなどテレビの可能性の再発見にもなっています。また、同番組はNHKワールドで放送されたほか、先日東京で行われた日中韓テレビ制作者フォーラム東京大会でも上映されました。中国、韓国の制作者からも高く称賛されるのと同時に、この番組が取り上げた問題は世界各国に共通するとして海外からも注目されました。

 5作目は、ギャラクシー賞大賞と放送文化基金賞 最優秀賞のダブル受賞となったNHK大阪放送局制作「NHKスペシャル『ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~』」。1993年、カンボジアPKO(国連平和維持活動)で派遣された日本人警察官が銃撃で亡くなった事件。23年間決して語られることのなかった事件の真相をつまびらかにした調査報道で、命の尊さと日本の国際貢献のあり方を考える秀逸な作品として、2016年に放送されたドキュメンタリーの中でもスクープ性と圧倒的な説得力を持った番組でした。

 6作目、最後の作品は、一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟が主催するATP賞ドキュメンタリー部門グランプリに選ばれた、テムジンとNHKの共同制作「BS1スペシャル『原爆救護~被爆した兵士の歳月~』」。広島の原爆投下直後に救護に向かった少年特攻兵たちの視点から、戦後71年を経てヒロシマを描いた番組で、「誰かが目を留めなければ埋もれてしまう歴史がある」という作り手の着眼点も高く評価されました。“隠れ被爆者”としての不安と差別、また生き残った者の負い目、戦争に加担した葛藤などを元兵士の証言、記憶の断片で積み上げた、地道な調査報道によるドキュメンタリーです。

 戦後70年以上が経過し、今だからこそ明かされる証言や秘話など、長い時を経てようやく明らかになる歴史の事実があることがこれらの作品からよく分かります。反対に、知らずに葬られてしまう可能性も多いにあるはずです。埋もれた事実、真実に光を当てようする制作者がいるからこそ、それらを番組として見ることが出来、新たに知ることが出来るのです。こうした地道な取材活動に対し、あらためて敬意を表したいと思います。

「ザ・ベストテレビ2017」
NHK BSプレミアム
10月1日(日) 午後0:45~4:16
10月2日(月) 午後0:45~4:54
■ゲスト/森達也 梯久美子  司会/三宅民夫 渡邊佐和子アナウンサー
*放送界を代表する6つのコンクール(計7部門)の優秀賞や奨励賞・選奨を受賞した作品のダイジェストと最高賞を受賞した番組を全編紹介。スタジオに番組制作者を招き、番組に込めた思いや見どころを聞いていく。
・第一部放送作品
第71回文化庁芸術祭賞 テレビ・ドキュメンタリー部門大賞
「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」(東海テレビ)

制作者ゲスト/伏原健之(東海テレビ ディレクター)/(C)東海テレビ放送
平成28年日本民間放送連盟賞 テレビ教養番組
「ノンフィクションW『撮影監督ハリー三村のヒロシマ~カラーフィルムに残された復興への祈り~』」(WOWOW)

制作者ゲスト/清水節(クリエイティブディレクター 企画・構成・取材)
平成28年日本民間放送連盟賞 テレビ報道番組
「枯葉剤を浴びた島2~ドラム缶が語る終わらない戦争~」(QAB)

制作者ゲスト/島袋夏子(QAB 琉球朝日放送 ディレクター)
・第二部放送作品
「地方の時代」映像祭2016 グランプリ
「島の命を見つめて~豊島の看護師・うたさん~」(山陽放送)

制作者ゲスト/武田博志(山陽放送 ディレクター *当時)/(C)山陽放送
第54回ギャラクシー賞 大賞
第43回放送文化基金賞 最優秀賞
「NHKスペシャル『ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~』」(NHK)

制作者ゲスト/旗手啓介(NHK ディレクター)/(C)NHK
第33回ATP賞 ドキュメンタリー部門 グランプリ
「BS1スペシャル『原爆救護~被爆した兵士の歳月~』」(テムジン/NHK)

制作者ゲスト/小柳ちひろ(テムジン ディレクター)/(C)NHK
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続け。

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