気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム
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視聴率100%男・萩本欽一とバラエティー番組の異端児・土屋敏男によるドキュメンタリー映画「We Love Television ?」待望のお披露目!

 台風18号が近づいた9月3連休の初日、東京・浅草は全国から集まった人たちでにぎわいました。今年で10回目となる浅草の風物詩「したまちコメディ映画祭 in 台東」のレッドカーペットに多彩なゲストが集結。その中心には萩本欽一さんの姿が。そう、欽ちゃんが映画の主演男優?として、浅草に帰ってきたのです。この映画祭の特別招待作品として上映された「We Love Television ?」はこれが初のお披露目。この作品は、かつて“視聴率100%男”の異名をとった萩本欽一さんの、最初で最後のドキュメンタリー映画です。そして、この貴重な作品を監督したのは、日本テレビのバラエティー番組を牽引した土屋敏男氏(現在は日テレラボシニアクリエイター)で、企画・構成も自ら務めています。土屋監督は、「進め!電波少年」などで“Tプロデューサー”や“T部長”として芸人から恐れられ、視聴者にもおなじみ。「電波少年」シリーズや「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」といった人気番組でドキュメントバラエティーというカテゴリーを開拓し、バラエティー番組黄金期を作った敏腕制作者であることは説明するまでもありません。その土屋監督が今なぜ、このドキュメンタリー映画を作ったのか、その意図が舞台挨拶で明かされました。

「TVをずっとやってきて、TVって何なのか? 視聴率を獲るってなんだ? 視聴率30%って何なのか?を探っていくと、師匠である萩本欽一に行きついた。自分の中でTVって何かを明らかにしたかった」。2011年、土屋監督はアナログ放送が終了する直前の2時間枠の番組を任されたのですが、実はこの時、その番組制作がゴールではなかったのでした。同年7月22日に放送された萩本さんの番組の制作過程から今日までをドキュメントしたもの、それがこの映画「We Love Television ?」なのです。萩本さんは、「ある日、(土屋監督が)いきなり家に来て『(視聴率)30%番組やりましょう!』って言ってきたの」と当時を振り返りました。これをきっかけに、2人は一緒に番組を作ることを決めるのですが、萩本さんはそこで、カメラを手渡されに思いついたことをカメラに収めるよう頼まれたのです。こうして貴重な萩本さんの自撮り映像が撮り貯めていかれたのをはじめ、土屋監督は萩本さんの番組制作過程を克明に記録し続け、視聴率というテレビ界の謎を解き明かそうとしていきました。あくまで、最初から映画を作ることを目的としていたわけでなく、「結果として撮れてしまった」という貴重な記録を映画にしたのだと言っています。そして足掛け7年を費やし今年の夏にようやく完成。このタイミングになったのは必然で、最初の劇場公開が萩本さんゆかりの浅草で実現することになりました。挨拶後のフォトセションでは、長年の師弟関係である2人が主演と監督というよりも、まるでお笑いコンビのように息のあったポーズをカメラの前で決め、会場を多いに沸かせていました。

 土屋監督は常々、萩本欽一さんとテリー伊藤氏を師と仰いでいることを公言しています。制作者として駆け出しの頃に両人から多大な影響を受け、多くを学んできました。そして、2人のテレビに対するこだわり、熱量、狂わんばかりの愛を感じたと言っています。そして今回、萩本さんの映画制作を通してあらためて本当にテレビのことしか考えていないと実感したとも。だからこそ、この映画を今の若い制作者に特に見てほしいと願っています。テレビに携わっている人たちが、萩本さんのように本当にテレビを愛しているのだろうかと、タイトルの最後に“?”をつけたと明かしています。今こそこれを問い直さないと、今後テレビはダメになるのではないかと・・・。
 そういう意味では、土屋監督は萩本さんやテリーさんに負けないくらい、いやそれ以上にテレビを愛し、今のテレビ界を誰よりも心配している現役のテレビマンに違いありません。

 こうした映画制作の背景を見聞きし、かつて自分が担当したテレビ誌の記事を思い出しました。BSデジタル放送の開局を機に2001年に創刊した弊社「デジタルTVガイド」。この雑誌の創刊の際、「デジタル時代のテレビ」という業界識者による巻頭エッセーのコーナーを設けました。その4号目(同年10月号)の原稿執筆を当時、編成部長の職にあった土屋監督にお願いしました。地上波の編成担当の責任者にあえてBSデジタル放送の始まり、存在をどう思っているのか伺いたかったからです。届いた原稿は、『BSに未来はあるのか』というタイトルで綴られ「BS放送にふさわしい番組がきっとある!」と土屋監督らしい力強く宣言され、最後は以下のように締められていました。

 ―――50年前にテレビを作った人たち、「そんなモノ面白いのかい?」って言っていた人たちを、テレビの前の釘付けにした人たちのミラクルを、今一度起こす努力をする「覚悟」持たなくてはならない。そんな時代に「テレビ屋」であることに喜びを感じる―――

 これをあらためて読み返し、テレビに対する熱い思いは当時も今も微塵も変わっていないことを再確認しました。誰よりもこよなくテレビを愛するテレビマンの「覚悟」がこの映画「We Love Television ?」で結実しています。ドキュメントバラエティーを開拓した「テレビ屋」土屋監督が師匠・萩本欽一のすべてを撮りきったリアルドキュメンタリー。土屋監督初作品はテレビ史の遺産ともなるべく価値ある映画です。

映画「We Love Television?」
■2017年 出演/萩本欽一・田中美佐子 河本準一ほか
     企画・構成・監督/土屋敏男 
(C)2017日本テレビ放送網


*ある日突然、土屋敏男がカメラを伴い萩本欽一宅を訪れ「視聴率30%を超える番組を作りましょう」と依頼。この一言から萩本と土屋の番組作りが始まる。出演者との顔合わせが始まり、舞台コントの制作が始動。この新たな挑戦の模様の記録は、萩本欽一のエンターテインメントへのあくなき挑戦と狂気を秘めた番組制作の奥義が詰まっている。「エンドロールの後を見逃さないでほしい」と監督が強調するスゴイ映像にも注目。主題歌は岡村靖幸「忘らんないよ」。

11月3日(金)東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次公開
*詳細・スケジュールは公式サイト、または各劇場でご確認ください。
http://kinchan-movie.com/

※京都国際映画祭2017(10月12日~15日)でも特別招待作品としても上映。
*詳細・スケジュールは公式サイトでご確認ください。
http://kiff.kyoto.jp/
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Y・I
株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。
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