気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム
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「東海テレビドキュメンタリー劇場」地元名古屋シネマテークで凱旋上映! テレビ⇔映画の理想のループが早くも実現へ

 ドキュメンタリー番組の映画化を牽引してきた東海テレビ。最新作「人生フルーツ」の人気は留まることなく観客動員数18万人を突破し、20万人の大台に迫ろうかという勢いです。昨年秋にこの映画をプロデュースした同局の阿武野勝彦プロデューサーが、当社発行「CULTURE Bros.」vol.5の取材の際に、「1本のドキュメンタリー映画に20万人が入るようになったら、地上波も含めてドキュメンタリーの世界は大きく変わる・・・」と述べられていたことを思い出しました。それが今、まさに現実に近づいています。

 東海テレビでは、今年6月に「藤井聡太14才」(*急きょフジテレビ系で全国ネット放送。プロデューサーは「人生フルーツ」の伏原健之監督)、8月に「樹木希林のばあばとフルタチさん」、それぞれのドキュメンタリー番組を金曜夜7時台で放送しました。来週9月1日にも同枠で「じゃがいも大使☆ 災害救助犬への奮闘記」を放送します。「入社36年、一度もドキュメンタリーがゴールデンタイムで放送されたことがありませんした」と振り返る阿武野プロデューサーらによる映画化プロジェクトの取り組みで、ついに編成の風穴が空き、大きな変化が確実に起こり始めました。

 そして9月2日からは、こうした動きに呼応するかのように、地元の名古屋シネマテークで特集上映「東海テレビドキュメンタリーの世界」が組まれています。今回ここで上映されるのは、2011年に公開された「平成ジレンマ」から上記「人生フルーツ」までの劇場版10作品に加え、テレビドキュメンタリーの傑作選11本。このうち、7番組は今回が劇場初公開となっています。しかもその中には、今年1月に放送された「居酒屋ばぁば」(上記メイン写真)が早くも含まれていて、個人的には最も注目作だと思います。同番組は、映画「人生フルーツ」の主人公の一人である津端英子さんとナレーションを務めた樹木希林さんが、居酒屋で、また映画の舞台となった津端家で、2ショットで語り合うという、「人生フルーツ」を観た人には涙ものの内容でしたが、放送は東海テレビのみの〝プレミアムローカル“。しかも早朝の放送とあって、泣く泣く見過ごした人も多いのでは。この機会に劇場の大スクリーンで観られるのですから、これはまさにプレミアム上映です!

 ほかにも、殺処分されるはずの犬に救済の手を差しのべた犬の訓練士とドーベルマン犬の訓練の日々から社会を問うた「悪い犬」や、福島県飯舘村から岐阜に訓練所に引き取られた黒い子犬「じゃがいも」が災害救助犬をめざす様子を追った「じゃがいもコロコロ~災害救助犬への長い旅」(続編が上記「じゃがいも大使☆~」)など気になる作品が盛り込まれています。既に、劇場公開実績のある司法シリーズ傑作選も加え、東海テレビの取材対象の幅の広さ、多用な表現へのこだわりを感じるラインナップです。

 阿武野勝彦プロデューサーは今年、「優れたドキュメンタリー番組の制作、その多角的な牽引」という功績で第43回放送文化基金賞の【個人・グループ部門】放送文化で表彰されましたが、贈賞式で「ドキュメンタリーのために何ができるのか、テレビのために何ができるのか、この賞を励みにスタッフとともに、もう少し歩みを進めていきたい」とスピーチ。今回の仕掛けもまさにその1つです。そこで、あらためて阿武野プロデューサーにこの特集上映の目指すところを伺いました。

 「来年、東海テレビは、開局60周年です。還暦を迎えます。また、一から始める再生の時です。地方民放は、ただそこに在るというだけでは、地元局になれない。地域の人たちに、ふるさとを感じてもらえるテレビ局でなくてはならないと思っています。ドキュメンタリーを一生懸命作って放送する地元のテレビ局として認知され、どこかに引っ越しても誇りに思われ、また里帰りしたときにやっぱり東海テレビのドキュメンタリー番組を観たいと思ってもらえるように活動してきました。今回の特集上映は、地元の皆さんに、一人ではなく、映画館でみんなの息遣いを感じながら、まとめて観てもらう機会になればと思っています」

 1作目の映画「平成ジレンマ」は、2011年1月29日にこの名古屋シネマテークで封切られました。以降、10作品を映画化してきた積み重ねが、CSやBSチャンネルでの特集放送へと繋がり、長らく阿武野プロデューサーが思い描いてきた、テレビから映画、映画からテレビへのループが次々と実現しています。今や全国にファンが存在すると言っても過言ではない「東海テレビドキュメンタリーの世界」が、記念すべきスタートの地に凱旋します。地元の方にとっては誇るべき至福の3週間になることでしょう。

東海テレビドキュメンタリー劇場
9月2日(土)~22日(金)
上映 愛知県・名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池1-6-13 今池スタービル2F)

トーク登壇予定
2日 圡方宏史監督(「ヤクザと憲法」「ホームレス理事長」)
10日 伏原健之監督(「人生フルーツ」「神宮希林」)

*詳細スケジュールは名古屋シネマテーク
http://cineaste.jp/
上映番組
「居酒屋ばぁば」
■2017年1月放送 出演/樹木希林 津端英子 ナレーション/本仮屋ユイカ ディレクター/伏原健之 プロデューサー/阿武野勝彦
*映画「人生フルーツ」の主人公の1人である津端英子さんはどんな暮らしをしているのか、同映画のナレーションを務めた女優・樹木希林が英子さんを居酒屋に招待して2人で女子会を開いた・・・。
「悪い犬」
■2017年2月放送 ナレーション/天野鎮雄 ディレクター/藤井章人 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
*2015年、名古屋市内の住宅から逃走したドーベルマン犬が通行人にけがを負わせた。殺処分されるはずのこの犬に救いの手を挙げた訓練士がいた。悪い犬との訓練の日々から、社会の姿を垣間見る。
「きずあと 101歳 戦争と平和のレクイエム」
■2016年11月放送 ナレーション/宮本信子 ディレクター/葛西友久 プロデューサー/伏原健之
(C)東海テレビ
*名古屋空襲で左目を失った杉山千佐子さんは、空襲で被害に遭った民間人への国による救済を訴えてきた。身寄りのない杉山さんを見守ってきた元新聞記者・岩崎建弥さんが伝えたいこととは。
「熱中コマ世界大戦」
■2015年7月放送 ナレーション/天野鎮雄 ディレクター/鈴木辰明 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
*町工場のオヤジたちが始めた「喧嘩ゴマ」の大会「全日本製造業コマ大戦」。直径2センチのコマの真剣勝負の人気が高まり「世界コマ大戦」が開かれることに。2013年放送の「熱中コマ大戦」の続編。
「じゃがいもコロコロ~災害救助犬への長い旅~」
■2015年1月放送 ナレーション/天野鎮雄 ディレクター/藤井章人 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
*福島県飯舘村から岐阜の犬の訓練所に引き取られた真っ黒な子犬。「じゃがいも」と名付けられ、災害救助犬になるため試験を受け続けるのだが・・・。スキャットだけの音楽とナレーションも話題に。
「熱中コマ大戦 全国町工場奮闘記」
■2013年6月放送 ナレーション/天野鎮雄 ディレクター/鈴木辰明 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
*いま、日本のモノづくりを支える町工場では、仕事の傍ら「喧嘩ゴマ」に夢中になっている人たちがいる。喧嘩ゴマの大会に密着し日本のモノづくりの熱き人々の姿に迫る。
「路上のカルテ」
■2009年5月放送 ナレーション/吉永小百合 ディレクター/風隼隆宏 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
*名古屋で路上生活をしている人たちを支援する「笹島診療所」のカルテが、平成の大不況で急増している。バブル経済崩壊直後の路上の人々を追い、いま何が起きているのかを問う。
「検事のふろしき」
■2009年6月放送 ナレーション/宮本信子 ディレクター/齊藤潤一 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
「罪と罰~娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父~」
■2009年4月放送 ナレーション/藤原達也 ディレクター/齊藤潤一 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~」
■2008年6月放送 ナレーション/寺島しのぶ ディレクター/齊藤潤一 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
「裁判長のお弁当」
■2007年4月放送 ナレーション/宮本信子 ディレクター/齊藤潤一 プロデューサー/阿武野勝彦
(C)東海テレビ
※上記4作品の詳細はこちらを参照
上映映画
「平成ジレンマ」「青空どろぼう」「死刑弁護人」「長良川ド根性」「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」「ホームレス理事長 退学球児再生計画」「神宮樹林 わたしの神様」「ヤクザと憲法」「ふたりの死刑囚」「人生フルーツ」
※映画作品の詳細はこちらを参照
番組情報
「じゃがいも大使☆災害救助犬への奮闘記」
東海テレビ
9月1日 金曜 午後7:00~7:57 (C)東海テレビ
*福島第一原発の事故後に福島・飯舘村に生まれ、岐阜に引き取られた犬「じゃがいも」。災害救助犬の試験に合格するまでの挑戦と故郷である被災地の姿を追う。2015年放送の「じゃがいもコロコロ~」の続編。
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Y・I
株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。
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