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静かに熱く秘めた思いを激白! 初監督映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」公開直前、佐古忠彦監督インタビュー (後編)

 ドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」で初めて映画初監督を務めた佐古忠彦さんのインタビューを引き続きお届けします。後半は、長らく沖縄取材に取り組んできた監督ならではの話を聞かせていただきました。

──「筑紫哲也NEWS23」のキャスターも長く務められ、筑紫さんと共に沖縄をずっと取材されてきた佐古監督ですが、監督の心をそこまで突き動かしたカメジローとの出会いはいつ頃だったのですか?
「前から、瀬長亀次郎はずっと気になっていました。最初に意識したのは、沖縄を考えるときの原点みたいな人である彫刻家の金城実さんから、彼の『銃剣とブルドーザー』という作品で、対峙する民衆の中にいる沖縄の偉人を『これが屋良朝苗で、これが瀬長亀次郎で・・・』と教えていただいたことがあったのですが、その時が最初にその存在を教えてもらったのかなと。屋良朝苗さんもそうですけど、そういう方たちが記録していた物の中に戦後史がいっぱい詰まっているんですよね。2年前、『不屈館』(沖縄・那覇市)に行くまで、カメジローもこんなに日記を残している人だとは思わなかった。カメジローの存在が沖縄の人の中で大きいなとなんとなく感じていたので、どういう人なのだろうと興味があって、そう言いながら初めて詳しく触れたのは、『不屈館』に行ったときが初めてですね。あれだけの資料があることにびっくりし、これは是非とも形にしたいと思いました」

──佐古監督が感じたカメジローの魅力を教えてください。
「眼光が鋭いですし、すごく特徴的な顔立ちですけど、笑うとチャーミングだし、本当に大勢の人を演説で集める。そして、みんなが“カメジロー”と敬称を略して呼び捨てにして呼ぶことに、この人の存在感が表れていると思います。そうさせるのは何なのか、それほどの人間力というか、そういう力を持った人はそうそういないだろうと。政治家でありながらこんなに沖縄のために、もっと言うと、実は民族という言葉をよく使う人なんですけど、この人が意味する民族とは沖縄ではなく、日本だったというんですよね。そのために、生きた人。人間力であり、権力に向かって貫く、不服従の精神と言いますか、その生き様というのは、なかなか今お目にかかれない魅力だと思います」

──沖縄返還後、カメジローが国会で佐藤栄作首相と対峙するシーンも象徴的でした。
「そうですね。相手も立場の違いを認めたうえでお互いそこでちゃんと話が出来ている関係というのも、今回発見できた部分です。今の国会の議論とか見ても、あの時代を見ることで今が見えるという1つのテーマとしていたので、あのシーンにいたっても実は今が見える気がする。いろんなものの今日性がこの中には詰まっています。どれをとってみても昔話ではないと思います」

──翁長雄志知事は、瀬長亀次郎の後継者といえるのでしょうか?
「翁長雄志は瀬長亀次郎か、というそういう矮小化した議論に持ち込んでしまうと話が小さくなってしまいます。『イデオロギーよりもアイデンティティー』と言った翁長さんと『小異は捨てずに大同につけ』といったカメジローはなんとなく似ている。小異を捨てて大同につけというけれど、小異は捨てなくていいんだ、みんな違いはある。でもこの時は一緒になろうぜ、と。当時はそれが米軍、対アメリカであり、そして今は日本政府が相手ですけど、1つになろうと。(昨年放送した)テレビを作るときに発想した、翁長県政が誕生したときの沖縄の空気とか、県民大会の時とか、映画にも入れましたが、裁判の前の集会でのリーダーに思いを託す人たちの表情とか、あそこはなんとなく今まで見聞きしてきたカメジローの時代を見られることが出来るのでは、というのが最初のきっかけです。政治家としてのカメジロー = 翁長雄志ではないですが、今の沖縄を包む空気であるとかあるいはリーダーとしての民衆との距離感であるとか、ひょっとしたら時代が再現されているというか、なんとなく通じるものがそこにあるのではないかと思います。実際に話していても、『あの時代がなかったら今はないと思うよ、カメジローがいたから今があるんだよ』という人もいます。きっと共通することがあるのでしょう」

──試写を観られた方はどんな感想があったのでしょう?
「カメジローを通して戦後史が見えたとか、そういういう風に感じてもらえたらいいなという感想があったので、ちょっとほっとしています。沖縄では関係者の方ですが、評価していただく声もいただきました。沖縄の人がどう思うだろうかということをいつも考えながら作ってきたので、そこは少しほっとしていますが、今回に関しては、そこは勿論だけれども、本土の人にやっぱり伝えたいというのがあります。あの時代を知らないから今のような形があるとすれば、この時代を知ることで、また1つのきっかけになればいい。そういう意味では、これを知らない人にこれがどう伝わるだろうか、というのがあって、その辺の感想、印象がどう出てくるかが楽しみです。沖縄で試写をやった時に、途中から客席に入ったのですが、これを今、沖縄で上映して沖縄の人が客席で観ているというのは、ちょっと感激しました。ぐっと来るものがあり、ちょっと涙が出てきました。公開の日はどんな心持ちになるのかな、私も客席に入って見てみたいと思っています」

──それでは最後にあらためて監督から見どころをお願いします。
「今、突然沖縄の人たちが声を上げたわけではないし、突然運動が盛んになったわけでもないし、突然基地が出来たわけでもない。今とは、歴史があるからなのであって、その歴史を見ないで今のありようを断じるのは、非常に違和感があるんです。特に沖縄の話はそこだと思っていて、ですから今一度これまで私たちの知らなかったことを見ることで、考えるきっかけになったらいいなと思います。しつこいようですけど、昔話ではなくて、どのエピソードをとっても今日性があります。今とこれからを考えることに結びついたらいいなと思っています」

 佐古監督は、「結果的には映画でしたが、正直映画を撮ったと言っていただいていいのでしょうか」と、最後まで監督の肩書に恐縮されているところに人柄を感じました。一方で、カメジローの話では生き生きと熱が入ってくる印象も。坂本龍一さんがこの作品のイメージで書き下ろしてくれたというテーマ音楽を「静かで力強く、そして重みがある」と表現していましたが、それは佐古監督の話しぶり、さらには制作者としての姿を表してもいました。

【プロフィール】 
佐古忠彦(さこ・ただひこ)   
1964年8月8日生まれ。神奈川県出身。O型。1988年TBS入社。96年~2006年「筑紫哲也NEWS23」を経て、政治部など。現在は報道局編集部で「JNNドキュメンタリー ザ・フォーカス」プロデューサー。「戦後70年 千の証言スペシャル 戦場写真が語る沖縄戦・隠された真実」(15年)、「報道の魂SP『米軍(アメリカ)が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか』」(16年)などを制作。
「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」
■2017年 語り/山根基世 大杉漣  テーマ音楽「Sacoo」作曲・演奏/坂本龍一
監督/佐古忠彦 エグゼクティブプロデューサー/藤井和史 プロデューサー/大友淳 秋山浩之 (C)TBSテレビ

*1945年の終戦後、沖縄で民衆の先頭に立ち、演説会を開けば毎回何万人もの人を集めた男。その名は瀬長亀次郎。団結して立ち向かったのは、戦後沖縄を占領したアメリカ軍の圧政。「不屈」の精神で、祖国復帰へ向けて民衆をリードした“カメジロー”。その知られざる実像と、信念を貫いた抵抗の人生を関係者の証言を通して浮き彫りにしていく。

8月26日(土)東京・ユーロスペース、沖縄 宮古島・よしもと南の島パニパニシネマ ほか全国順次公開。沖縄 那覇・桜坂劇場は先行公開中

*詳細・スケジュールは公式サイト、または各劇場でご確認ください。
http://www.kamejiro.ayapro.ne.jp/

撮影/中越春樹

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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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