気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム
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静かに熱く秘めた思いを激白! 初監督映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」公開直前、佐古忠彦監督インタビュー(前編)

 前回紹介した、TBSのドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」は、現地沖縄で先行公開が始まりました。劇場の初日動員は実写映画として第1位を記録。さらに、場内では初めて上映前に拍手が起こるほど、空前の盛況ぶりのようです。今回は、初めて映画監督を務めた佐古忠彦さんに公開前に伺ったインタビューを前・後編2回に分けてお届けします。

──昨年放送された「報道の魂」枠のドキュメンタリーの映画化とお聞きしています。
「放送後に大変多くの方から反響をいただきました。TBSだけの放送だったのですが、こんなに反応があるのだから、これをもっと広い範囲で多くの方に観ていただけたら、基地問題で沖縄の人たちがなぜ声を上げ続け、県民大会を重ねなければいけないのか、また基地に反対しているたちを一面的な部分だけで批判してしまうようなことも多いなか、少しでも理解につながるのであれば意味がある。それには映画という手法もあるのではないかと思いました。とはいえ、どうしたら映画が出来るか、全くわかっていない(笑)。初めての経験なものですから。まずは、企画書を書いてTBSテレビの映画事業部に持っていきました。そしたらすぐ賛同してくれて、やってみようということになりました。8月に放送して、ちょっといろいろ考えて10月に企画書を出して、そこから先は比較的スピーディーに進んでいきました」

──ここ数年、地方の放送局がドキュメンタリー番組を映画化する動きがありました。
「おっしゃるように、 東海テレビさんや山口放送さんなど、他の民放局のドキュメンタリー番組が映画に発展していく姿はずっと意識していましたので、同じモノを作る人間として私たちが出来ていないなというのもどこかでありました。どうしたらこういう風に出来るのだろうと。ドキュメンタリー映画そのもの、そういう文化が根付いていないし、そのための方法はあるのかなとずっと考えてはいました。でも、やっぱり映画はどこかで別世界という意識がありました。テレビのドキュメンタリーの中で生きていると、どこかで映画が違う世界だと思っていて、発展形という形、他の局がやっているような形は素晴らしいなとは思っていたのですが、なかなかリンクしていなくて、こういう形があるんだというのは今回学んだ部分です。自分がまさかこういう機会に恵まれるとは全く思ってもいませんでした。自分もまた挑戦したいですし、今までなかった文化を根付かせていきたいというのもあります。後輩たちがチャレンジできる、そういうものに繋がればいいなと思います。」

──映画とテレビの違いなどはありましたか?
「映画だからという苦労はあまり感じませんでした。作業としてはあまり変わらない。ただ、107分という尺のものを作るというのはまず普通ないですから(笑)。だからこその苦労と言えば、むしろテレビを作る際も含めてあまり変わりなくて、実は60年前の話ですので、圧倒的に現場がない。ストーリーの根幹を成すものが日記だったり、アメリカの機密資料だったり、白黒の写真だったりということで、映像的に動きがない。退屈と思われてしまうからと多用することを嫌う人も結構多いのですが、それこそが事実の積み上げであり、物語の根幹を成すものなので、それは外せない。1つ1つ所蔵されているところからアドバイスしてもらったり一緒に探してもらったりして引っ張りあげて、その中からこれだというものを見つけて映像にしていく。そこは大変なことだったかもしれないですね」

──映画化するにあたって力点を置かれたことは?
「証言者を追加取材して、カメジローのエピソードの数を増やしました。戦後、アメリカが沖縄に対して何をやったのか、他にも、元警察官で体制側にいた人なのに15万人を集めた県民大会でカメジローの言葉に引っ張られた話などを入れて物語の幅を広げました。映画にするにあたって意識したことです。実は、エピソードをたくさん重ねることで、カメジローと、米軍や米軍側についた反カメジロー勢力との議会の中の攻防、やりとりを含めて本当はもっと盛り込みたかった。そこに至るまでのいろんなエピソードと、物語がガッーと走り始めてからのところの作り方、そこのバランスがずっと悩ましかったところです。多分どれをやっても正解なのでしょうけど、いまだに見る度に私自身も感想が違ったりする。描きようはまだまだいろいろあったのだろうな、と。それだけカメジローはエピソードがふんだんにあって事欠かない人で。まだまだ本当にあるんですよ! この人の人間性みたいなところにどんどん入りこんでいくのも一つだし、本当はそこをもっとやりたかったんですけど。今回は、カメジローという人の生き様と、そこを通して見る戦後史という2つのラインを軸に見せていくので、そこのバランス、どっちかに偏っても疎かになるし、そこをどう見せていくかをずっと考え続けていました」

──今回、JNN系列の報道の財産が存分に生かされたと伺っています。
「歴史ある系列だからこそ掘り起こすことが出来ました。RBC琉球放送では、映像を亀次郎リストとしてきちんと保管されていましたし、音声データもMDになってきちんと保管、整理されていて、カメジロー時代のものが出てくる。機密資料もそうですが、それをアメリカから取ってきて保管して整理してくれた人がいたからこそ、引っ張り出すことが出来るのであって、今回のRBCのデータもそうですよね。よくもあんなにきれいに取っておいてくれたな、というのがあって。あれがあったからこそ出来たのだと思いました」

──では、資料発掘も取材も佐古監督おひとりだったのですか?
「そうなんです。手伝ってくれる人はいません(笑)。カメラの取材をせずに、一日資料発掘に充てるだけの日も作って現地へ行きました。そのときは一日中、資料館にこもって資料を引っ張って、コピーして、帰ってきて撮影するとか…。また、映像や音声を発掘するのも、RBCさんにお邪魔して、部屋を借りてこもってずっとひたすら聞いて、これだ!みたいな。今もう1回やれと言われたら・・・。でも、それを1つ1つ積み上げていくのが楽しかったりするものですから。それを持っていてくれているところがあるので出来るわけです。向こうは向こうで、眠っていたものを掘り起こしてくれてありがとうと言ってくれて。いやいやこちらこそと(笑)」

 お話はこの後、カメジローという人の魅力についてなどどんどん盛り上がっていくのですが、続きは後編をご覧ください。

【プロフィール】 
佐古忠彦(さこ・ただひこ)   
1964年8月8日生まれ。神奈川県出身。O型。1988年TBS入社。96年~2006年「筑紫哲也NEWS23」を経て、政治部など。現在は報道局編集部で「JNNドキュメンタリー ザ・フォーカス」プロデューサー。「戦後70年 千の証言スペシャル 戦場写真が語る沖縄戦・隠された真実」(15年)、「報道の魂SP『米軍(アメリカ)が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか』」(16年)などを制作。
「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」
■2017年 語り/山根基世 大杉漣  テーマ音楽「Sacoo」作曲・演奏/坂本龍一
監督/佐古忠彦 エグゼクティブプロデューサー/藤井和史 プロデューサー/大友淳 秋山浩之 (C)TBSテレビ

*1945年の終戦後、沖縄で民衆の先頭に立ち、演説会を開けば毎回何万人もの人を集めた男。その名は瀬長亀次郎。団結して立ち向かったのは、戦後沖縄を占領したアメリカ軍の圧政。「不屈」の精神で、祖国復帰へ向けて民衆をリードした“カメジロー”。その知られざる実像と、信念を貫いた抵抗の人生を関係者の証言を通して浮き彫りにしていく。

8月26日(土)東京・ユーロスペース、沖縄 宮古島・よしもと南の島パニパニシネマ ほか全国順次公開。沖縄 那覇・桜坂劇場は先行公開中

*詳細・スケジュールは公式サイト、または各劇場でご確認ください。
http://www.kamejiro.ayapro.ne.jp/

撮影/中越春樹

後編はこちらへ⇒

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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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