気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム
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TBS「報道の魂」から「不屈」の男・瀬長亀次郎の生き様を描いた「米軍(アメリカ)が最も恐れた男~」を映画化!

 TBSがドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」を制作、8月12日に映画の舞台である沖縄で先行公開、続いて同26日より順次全国で公開します。この作品は、昨年、「報道の魂」のスペシャル枠で放送した「米軍(アメリカ)が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか」を追加取材、再編集して映画化。戦後の米軍支配に立ち向かった故瀬長亀次郎さんの生き様から沖縄の戦後史を描いています。昨年の番組から、新たな証言者の取材を積み重ね、JNN系列に残されていた貴重な映像・音声などを発掘することで、より重厚なドキュメンタリーに仕上げています。「筑紫哲也NEWS23」のキャスターを長年務めた佐古忠彦氏の初監督作品となる本作。テーマ音楽は、この作品の趣旨に共感した坂本龍一さんがオリジナルで書き下ろし、さらに亀次郎の日記などの語りを大杉漣さんが務めるなど話題満載です。同局では、これまでスポーツ系ドキュメンタリーの映画化はあったものの、意外にも報道系では初めての本格的な映画になります。

 映画の中に登場する、沖縄音楽ボーカルグループのネーネーズが歌う『おしえてよ亀次郎』は、インパクトのある歌詞とメロディーで一度聴くと確実に耳に残ります。そんな歌にまでなり、沖縄の大衆に愛され続ける瀬長亀次郎とはそもそもどんな人物なのか? 亀次郎と民衆の闘いを伝える資料館「不屈館」の紹介によれば、「沖縄の祖国復帰と平和な社会の実現を目指して命がけで闘った瀬長亀次郎(元衆議院議員)」と記されています。人生の後半は確かに沖縄県選出の国会議員でしたが、実はそれ以前の彼の人生は波乱に満ちた激動の連続でした。

 瀬長亀次郎は1907年に現在の豊見城市で生まれ、今年が生誕110年です。第2次大戦後、うるま新報(現在の琉球新報)社長に就任。その後、沖縄人民党結成に参加、1952年の第1回立法院議員(アメリカ施政権下時の沖縄の立法機関)選挙でトップ当選を果たします。この選挙後に開催された琉球政府創立式典で宣誓を拒否したことによりアメリカ占領軍からにらまれます。そしてここから幾多の苦難に直面していくことになったのです。

 この作品では、それから亀次郎が民衆の先頭に立ち、祖国復帰へ向けて常に民衆を鼓舞し、アメリカに真っ向から挑んでいく様子を描いています。それはまさに、彼が好んだ言葉「不屈」を体現しているかのようです。演説会を開けば、毎回何万人もの人を集めました。そんな亀次郎を、アメリカ軍政は常に恐れたのでした。沖縄の戦後史を語る上で欠かせない最も重要な人物です。

 「不屈館」の館長を務める亀次郎の次女・内村千尋さんは「父は沖縄を団結させるためにやっていた」と語っています。それはまさに「オール沖縄」の原点です。今、沖縄では辺野古への基地移設反対の民意に向き合わない政府と対峙する現代のリーダー、翁長雄志知事をその象徴として結束していますが、沖縄県民はかつての亀次郎をそこに重ね合わせています。映画では、沖縄のたどってきた「オール沖縄」の変遷の理解なしに、保守や革新というような東京発の安易な見方、本土の視点で捉えてしまうことの危険性を警告しています。映画資料には「沖縄戦を起点に今につながる基地問題。本土復帰45年を経て今なお米軍基地が集中する中、沖縄の人が声を上げ続ける原点・・・。それはまさに戦後の沖縄で米軍支配と闘った瀬長亀次郎の生き様にあった」と記されています。言い換えれば、亀次郎が不屈の精神で闘った時代を振り返ることなしに今の沖縄を理解することはできない、ということです。つまり、表層だけでは真実は見えないのだと。

 佐古監督はこの作品を「決して昔話ではない」と繰り返し強調しています。筑紫哲也さんと共に長きにわたり沖縄の現場を取材し続けてきたからこその説得力のある言葉です。佐古監督だからこそ感じた亀次郎の魅力がこの映画に存分に込められています。その佐古監督の思いについて伺ったインタビューを次回、本欄でお届けします。

 沖縄先行公開日である8月12日、奇しくも辺野古への基地移転を阻止する沖縄県民大会が劇場のある那覇市内で開催されます。佐古監督はこの日、初日の監督舞台挨拶で現地入りするのですが、きっと特別な思いをめぐらすことでしょう。そして沖縄はこの日、天候にも増して熱い1日になるはずです。

「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」
■2017年 語り/山根基世 大杉漣  テーマ音楽「Sacoo」作曲・演奏/坂本龍一
監督/佐古忠彦 エグゼクティブプロデューサー/藤井和史 プロデューサー/大友淳 秋山浩之 (C)TBSテレビ

*1945年の終戦後、沖縄で民衆の先頭に立ち、演説会を開けば毎回何万人もの人を集めた男。その名は瀬長亀次郎。団結して立ち向かったのは、戦後沖縄を占領したアメリカ軍の圧政。「不屈」の精神で、祖国復帰へ向けて民衆をリードした“カメジロー”。その知られざる実像と、信念を貫いた抵抗の人生を関係者の証言を通して浮き彫りにしていく。

8月12日(土)沖縄・桜坂劇場先行公開
8月26日(土)東京・ユーロスペース ほか全国順次公開

*詳細・スケジュールは公式サイト、または各劇場でご確認ください。
http://www.kamejiro.ayapro.ne.jp/
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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